七 ページ7
.
会議を終え、屋上へと足を運ばせる。
近頃、禁煙ブームなのか、喫煙できるスペースは少ない。
溜息交じりに苦い煙を吐いた。
「ったく、上も面倒なこと言うよな」
どうやら同じ目的の客がいたようだ。
ここを使わせてもらっている身だ。
遠慮して端のほうに寄り、身を隠すようにして壁にもたれかかった。
「あの仕事量で今日中って鬼かよ」
男は煙草を吸いながら、愚痴をこぼす。
隣にいる同僚に何度も同意を求めているが、隣からは乾いたような笑い声しか返ってこない。
姿は見えないが呆れているのだろう。
(どこも忙しそうなもんで)
所謂、エリートまっしぐらの道を歩む人間だ。
土方とはまた違う人種であろう。
布が擦れ着古した自分の隊服とは違い、彼の隊服はまだ真新しい。
歳も土方より若いのではないだろうか。
「結局下が仕事押し付けられて。あーあ、やってらんねえよ」
息をするように垂れる愚痴に苛苛してきた時、
「仕方ないじゃないですか。
とりあえずは今日の仕事に取り掛かりましょうよ」
聞き馴染みのある声がした。
思わず顔を覗かせ、姿を確認する。
(Aだ…)
愛おしき彼女は半ば諦めたような顔で男を見ながら、元の場所へと帰ろうとする。
どうやら、彼女はこの愚痴ばかり吐く男を連れ戻しに来たらしい。
ここに配属されたばかりというのに、運悪く対応しづらい上司に当たってしまったようだ。
戻んなきゃ、と足を向けるAの腕を男は掴む。
彼女は一瞬嫌そうな顔を浮かべたが、上司の手前その表情を真面目な顔へと変化させた。
「いいじゃん。少しくらいお前も付き合ってくれたって」
そう言って彼は煙草をAに向ける。
彼女はそれ受けとることなく、腕を静かに振り払って、
「先輩がやられないなら、私が代わりにやっておきます。
失礼します」
深く頭を下げ、すぐにその場を離れていく。
男は過ぎ去っていく彼女の背中を見ながら、
「んだよ。付き合い悪ぃな」
わざとらしく大きく溜息をつく。
(…なんだ。相変わらず馬鹿真面目なAのままじゃねえか。
少々生意気な気もするが)
まだ付いている火を押し消して、男の前に姿を現す。
彼は土方を見て、怪訝そうな顔を浮かべながら顎だけで礼をして。
「すまねえな。うちの、部下がお世話になってるようで」
そんな愚痴吐きの男に大人気もなく、悪びれもせずに言い放った。
.
216人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Nattu(プロフ) - amefurasi750さん» コメントありがとうございます!とても嬉しいです;;銀魂のキャラはどの子も魅力的なので自分もそれをあまり崩したくない意識で書いていました^^どストライクとのお言葉嬉しすぎます;;本当にありがとうございました! (2022年12月13日 0時) (レス) id: 3f1ef1106e (このIDを非表示/違反報告)
amefurasi750(プロフ) - ありがとうございました!すごく心に残る話で、土方さんや沖田君たちの性格がそのままで安心して読むことができました!尚且つ土方さんと主人公ちゃんとのイチャイチャ具合がドストライクでした! (2022年12月8日 8時) (レス) @page32 id: 0bed4b2b02 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Nattu | 作成日時:2022年9月1日 23時