三十壱 ページ31
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また、緩急めまぐるしい日常になっていく。
それに慣れるのに大変だと感じるよりも、楽しいという感情が勝っていた。
「結局、アンタらは変わらず仕舞いって訳ですかい」
面白くない、と、沖田は口を尖らせた。
彼の嫌味には慣れっこだ。
Aも土方も反応することなく、ただただ目の前の事件と向き合っている。
互いに真面目で仕事熱心な素振りは変わらない。
それが心地よかった。
しかし、戻ってきて変化したことが一つ。
「じゃあね、A」
「ん、おやすみい」
女性職員が増えたことによる空き部屋不足だ。
かつてまで同部屋だった千影は同アパートの住人となっていた。
フロントまでは一緒に帰り、そこからそれぞれの家路へと分かれていく。
寂しさもあるものの、時折どちらかの家で行われる飲み会が仕事の生きがいの一つとなっていた。
Aの自宅を訪れるのは千影だけではない。
「おつかれさん」
「お疲れ様です」
土方は渡した合鍵で度々訪れていた。
時折、沖田や近藤が来ることもあるが、最近では遠慮しているのか近藤が訪れることは滅多になくなった。
「ビールでいいですか」
「おう。すまねえな」
引っ越したばかりの無機質な部屋にはAのものだけでなく、彼の私物も増えている。
一人の時にそれを見ると、何となく安心感を得ていた。
「明日、早えんだろ。悪いな、上がって」
「いいんですよ。むしろ忙しい時にすみません」
「ったく、謝んなっつったろ。
少しは甘えろ」
二人だけの時の土方は、いつもに比べやや感情的にAに接してくれる。
そして、その彼の表情もいつもより柔らかだ。
それにつられて、Aの表情も緩んでしまう。
(仕事をしている時の土方さんも好きだけど、こうしている時の土方さんも好きだな)
Aだけの前に居る彼は特別なもののような気がして、未だ慣れずにどきどきとしてしまう自分がいる。
それは彼も同じのようで、互いに身を寄せ合って座ることはない。
いつも机を挟んで向かい合っている。
新米の頃から憧れていた、対等に接してくれる土方とその部下であるAの姿、そのままだった。
それが私達の形で、
「明日、私早いですけど、まだ寝てていいですからね」
「部下より長寝なんてできるか。一緒に出る」
「ったくどやされても知りませんからね」
「堂々としてれば問題ねえよ」
恋人であり同僚である関係性は未だ続けていく予定だ。
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〜終〜
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Nattu(プロフ) - amefurasi750さん» コメントありがとうございます!とても嬉しいです;;銀魂のキャラはどの子も魅力的なので自分もそれをあまり崩したくない意識で書いていました^^どストライクとのお言葉嬉しすぎます;;本当にありがとうございました! (2022年12月13日 0時) (レス) id: 3f1ef1106e (このIDを非表示/違反報告)
amefurasi750(プロフ) - ありがとうございました!すごく心に残る話で、土方さんや沖田君たちの性格がそのままで安心して読むことができました!尚且つ土方さんと主人公ちゃんとのイチャイチャ具合がドストライクでした! (2022年12月8日 8時) (レス) @page32 id: 0bed4b2b02 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2022年9月1日 23時