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「A、ごめん!!
昨日の引継ぎでやらかしたっぽい!呼び出し、行ってくる!」
身体を洗い終えたところで、脱衣所から音が鳴っていると思えば、嵐のように千影はいなくなっていた。
(もう暫く、一緒に入れないのに…)
そう寂しくなりながらも、仕方なく湯舟に浸かる。
風呂に浸かりながら、初めて屯所に来てからのことを思い返す。
何も分からず入隊し、辛く涙するばかりだった日々も今では懐かしい、楽しかったと思える自分がいて、成長したなと認識させられた。
今では、性別問わず下に指導する身だ。
我ながらよくもっているほうだと思う。
それも近藤や千影、Aを温かく迎えてくれる同僚が周りにいるから、
想い人である土方がいるからであって。
(結局、全然話せないまま、ここまで来ちゃったな)
話といっても業務中の会話だけで。
Aが一番隊副隊長として勤務し始めて以降、以前のように一緒に剣を交えたり食事をとったりすることはなかなかなかった。
一緒になる機会があっても、その周りには必ず同僚がいる。
二人きりだからできる話もできないでいた。
心残りはあるが、仕方ないとどこか割り切っていた。
その心残りを洗い流すようにして勢いよく風呂を上がり、身支度を整える。
「Aちゃん、ちょっと」
着替えていると、不意に番台から声をかけられた。
手を小刻みに仰ぐ姿に、着替えながら彼女に駆け寄る。
「どうしたの、急に」
「あっこ」
そう言って外の自販機を指差す。
(…あっ)
そこには、見覚えのある濡れた黒い髪。
重い前髪の下から端正な顔が覗く。
「Aちゃんをずっと待ってたみたいよ」
そういえば、隣の浴室から水音が聞こえてきていた。
Aよりも後に入り、Aより先に上がる音に、早いなあと何となく思っていただけで、まさかそれが彼だったとは思わずに。
隙間から見えた彼は牛乳瓶片手に、空を見つめていて、
「教えてくれてありがと。私の知り合いだったみたい」
急いで服を着替え、濡れた髪のまま外に出る。
扉の開く音に、土方は振り返って眉を顰める。
「…髪くらい、乾かしてこい」
回れ右するように、顎をくいとしゃくった。
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Nattu(プロフ) - amefurasi750さん» コメントありがとうございます!とても嬉しいです;;銀魂のキャラはどの子も魅力的なので自分もそれをあまり崩したくない意識で書いていました^^どストライクとのお言葉嬉しすぎます;;本当にありがとうございました! (2022年12月13日 0時) (レス) id: 3f1ef1106e (このIDを非表示/違反報告)
amefurasi750(プロフ) - ありがとうございました!すごく心に残る話で、土方さんや沖田君たちの性格がそのままで安心して読むことができました!尚且つ土方さんと主人公ちゃんとのイチャイチャ具合がドストライクでした! (2022年12月8日 8時) (レス) @page32 id: 0bed4b2b02 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2022年9月1日 23時