三十 ページ30
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「早急に必要だったから結構前にお前に発注頼んだんだろうが」
「すみません…」
「だから、この娘も何度も謝ってるじゃないですか!いい加減そろそろ許してあげてくださいいよ」
「大体、千影の教育が」
「次は私ですかあ!?」
屯所に着いて早々の修羅場に彼らの間を割って入る。
千影はAの姿を見て、ぱあっと笑顔を見せて、
「…この娘を採用したのがAなら、土方さんだってそう悪くは言えないでしょ」
と土方にAの身体をぐいと押し付けた。
千影の背中越しに不安そうな顔が覗く。
Aが初めて人事として採用した人材だった。
とはいっても、千影と同様の職種ではあったが、初めての同性の後輩ということもあり思い入れがあった。
「千影。論点を逸らしても無駄だ。Aとお前らのミスは関係ねえだろうが。
ったく…次は許さねえからな」
「申し訳ございません…」
入隊して早々、厳しい洗練を受け彼女は今にでも泣いてしまいそうだ。
その姿を懐かしいと思いつつ、彼女の肩を抱く。
彼女は面接官だったAを見て、一瞬緊張した素振りを見せたが、千影と仲良さそうな様子を見てほっとしたように息をついていた。
「ほんとごめんねえ、A。
Aの門出、私が一番にお祝いしたかったのは山々だったんだけどさあ」
千影は相変わらず楽しそうにけらけらと笑っている。
そんな彼女の広い心が人を育てる素質があると見込み、千影に新人の教育を任せてよかったと内心安心していた。
「いやいや。それにしても変わらず土方さんも手厳しいねえ。
事務の子にまでそんな言わなくていいのに。
土方さん、私達が新人の頃もあんな感じで叱ってたから、慣れるしかないのよねえ。
もし、きつかったら私達に言ってくれていいから」
「A」
「わっっ」
部屋に戻ったと思っていた上司はAを見下ろして、きっと睨んでいる。
愛想笑いを浮かべながら、その場を逃げ出そうとするも首根っこを掴まれる。
「お前には書かなきゃならん書類が山ほどあるだろうが。来い」
「早速、厳しいですねえ…もう」
ぐだぐだと文句を言われながら、腕を引かれていく。
だんだんと部屋が近づいて、千影達の姿も見えなくなった時。
「…ったく。突然お前は異動になるわ、新人は寄越すわ、こっちはどれだけ…。
やっと帰ってきやがって。
待たせ過ぎだ、馬ー鹿」
土方は嬉しそうに微笑んだ。
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Nattu(プロフ) - amefurasi750さん» コメントありがとうございます!とても嬉しいです;;銀魂のキャラはどの子も魅力的なので自分もそれをあまり崩したくない意識で書いていました^^どストライクとのお言葉嬉しすぎます;;本当にありがとうございました! (2022年12月13日 0時) (レス) id: 3f1ef1106e (このIDを非表示/違反報告)
amefurasi750(プロフ) - ありがとうございました!すごく心に残る話で、土方さんや沖田君たちの性格がそのままで安心して読むことができました!尚且つ土方さんと主人公ちゃんとのイチャイチャ具合がドストライクでした! (2022年12月8日 8時) (レス) @page32 id: 0bed4b2b02 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2022年9月1日 23時