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弐十八 ページ28

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土方にも、自分にも向き合う時間がきた。
そう思うと、自然と涙が落ちていた。

時折、遠方に住む家族と電話をした時。



『そういえば、お隣のお姉ちゃん嫁に行ったんだってえ。


早いわねえ。そんな年だなんて』



自分以外の誰かの吉報を聞く。
運が良いことに家族は仕事熱心なAを応援してくれて、女としての幸せと呼ばれるものについては触れてこなかった。
しかし、誰かのその幸せな近況がAをじわりじわりと苦しめていた。



「私は…いずれ、結婚したい…ですし。



子どもは…今はあんまり想像できないけれど…できたら嬉しいんだろうなって思うんです」



かといって、そう簡単に土方に相談できる勇気はなかった。
彼も女同様に




「だけど。


私はこの仕事が大好きだから、続けたいんです。


でも…





私は真撰組の鬼の副長、土方十四郎も大好きだから、ずっとそのままで居てほしいと思ってしまうんです」




この真撰組という組織が好きで、この仕事を誇りに思っているからだ。
だからこそ、ずっと話せなかった。

涙ながらに語る姿を土方はまっすぐ見ている。
うんうん、と優しい眼差しで頷いている。
そして、席を立ち、隣に腰を下ろす。



「ったく。せっかく綺麗なかっこしてんのに、間抜け面しやがって」



「すみませ…こういうつもりじゃなかったんですけど」



「謝んな。




俺は、お前の素直な気持ちが聞けてよかった、と思ってる」




とっつあん達に借りができちまったな、彼はそう言い眉を下げる。
土方は着物の端を握るAの手を剥がし、自分の手で握り直す。



「まずは…すまなかったな。


Aを一人にして悩ませて。俺に話しにくかったのはよく分かった。


それにうちの上司達がお前を急かすようなことして申し訳なかった」



そう言って彼は深々と頭を下げた。
思ってもみない行動にAは狼狽えるばかりで。



「話聞く限りだと、今のAにとって一番は、仕事な訳だ」



「そう、です…」



その応えに、よし、と土方は勢いよく立ち上がる。




「…答え出てんじゃねえか。



じゃあ。仕事を優先したらいい。



結婚とかガキとか…は二の次だ」



そのままAの腕を引いて部屋を出ようとする。
待って、と声を掛ければ、彼はふんと鼻をならして、



「安心しろ。




それがいつになろうが構わねえよ。





俺が保証してやるからよ」





歯を見せて笑った。


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設定タグ:銀魂 , 真選組 , 土方十四郎   
作品ジャンル:アニメ
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Nattu(プロフ) - amefurasi750さん» コメントありがとうございます!とても嬉しいです;;銀魂のキャラはどの子も魅力的なので自分もそれをあまり崩したくない意識で書いていました^^どストライクとのお言葉嬉しすぎます;;本当にありがとうございました! (2022年12月13日 0時) (レス) id: 3f1ef1106e (このIDを非表示/違反報告)
amefurasi750(プロフ) - ありがとうございました!すごく心に残る話で、土方さんや沖田君たちの性格がそのままで安心して読むことができました!尚且つ土方さんと主人公ちゃんとのイチャイチャ具合がドストライクでした! (2022年12月8日 8時) (レス) @page32 id: 0bed4b2b02 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Nattu | 作成日時:2022年9月1日 23時

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