弐十四 ページ24
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「こんな形で休日に会うとは思っていませんでした」
「おう。馬子にも衣装って奴じゃねえか。座れ」
重い着物を邪魔に感じながら貴重な休日の時間を使う。
それも嫌悪感を持っている上司との約束だ。
彼は珍しく身なりを整えて、にやりと笑ってこちらを見ている。
その隣には組織の重役だった父親が座っている。
(なるほど…この人が松平さんがお世話になったっていう)
松平に比べ体格は小さなものの、筋肉質の身体。
退職後幾ばくか経過しているとはいえ、背筋はぴんと伸びている。
眉間の皺が深く刻まれていて厳しい世界を意気に抜いてきたなのだと感じた。
「Aさん、初めまして。
君の活躍は聞いているよ。今日はありがとう」
「いえ。こちらこそ。本日はよろしくお願い致します」
「…では、年寄りは出て若いもんだけにしますか」
父親代わりに隣についた松平は腰を上げた。
重々しい場所は苦手なようで、煙草を咥えて上司の父親と部屋を出ていった。
上司と取り残され、思わず一息つく。
男は笑い、Aの身体を舐めるように見た。
満足そうにふんと鼻を鳴らし、まじまじと顔を見てきた。
「何、俺のために化粧だの可愛い恰好してくれたんだ」
「仕方ないでしょう。上に言われたら断れませんし。
…っていうか、貴方の気持ちには何となく気が付いていましたし、そことなく断ってきたはずですが」
男だって馬鹿ではない。
嫌だとか無理だとか直接的な言葉を述べなくても、Aが嫌っていることくらい何となくでも分かっていたことだろう。
だからこその父親の権力だ。
「お前だって相手いねえんだろ。
それにAくらいの年頃になると、周りが結婚し始めて焦る時期だ。
俺だって世間一般でいやあ、玉の輿といっても可笑しくない。
別に俺と一緒になるのは悪い話じゃないだろ」
(…超悪い話なのよ)
肩がさらに重くなったような気がしてくる。
目の前の男はすっかり綺麗になった顎を撫でながら、したり顔でこちらを伺っている。
ここが格式高い店でなければぶん殴りたい気持ちに駆られていて。
「もし…だ。
お前に男がいた場合…どうせ元職場とかだろ。
だとしたら、お前の好きな仕事を選ぶか結婚を選ぶか。
そして、あれだけ嫌そうな顔して働いてたんなら…今のお前にとって大事なのは仕」
「勝手に決めつけないで下さいっ!」
思わず感情的になって反論してしまっていた。
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Nattu(プロフ) - amefurasi750さん» コメントありがとうございます!とても嬉しいです;;銀魂のキャラはどの子も魅力的なので自分もそれをあまり崩したくない意識で書いていました^^どストライクとのお言葉嬉しすぎます;;本当にありがとうございました! (2022年12月13日 0時) (レス) id: 3f1ef1106e (このIDを非表示/違反報告)
amefurasi750(プロフ) - ありがとうございました!すごく心に残る話で、土方さんや沖田君たちの性格がそのままで安心して読むことができました!尚且つ土方さんと主人公ちゃんとのイチャイチャ具合がドストライクでした! (2022年12月8日 8時) (レス) @page32 id: 0bed4b2b02 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2022年9月1日 23時