弐十三 ページ23
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久しぶりに会った相棒は浮かない顔をしていた。
「千影とショッピングなんて本当久しぶりだよね。研修以来?
またこういう風にできるなんて嬉しいなあ」
そうAは早口に言う。
彼女はきっといつも通りだと思って千影に接している。
(もう…どれだけAと一緒にしてきたと思ってんの)
そんな感情を表に出さず、千影も当たり前の顔をして女と接する。
彼女は気づいていないのか、強張った笑顔でこちらを見ていた。
買い物は終わり、買い物袋を抱えたまま公園のベンチに腰掛けた。
「千影。はい、これ」
「ん。ありがと」
掌に乗せられる千影の好みの味のジュース。
隣では勢いよくそれを飲んで、満足げなAがいた。
買い物で疲れた顔の中には、やはり他の感情が見え隠れしていて。
「A。今日、何か私と話したくて呼んだんじゃないの」
「…ん?何が?私は千影とデートしたかっただけだよ」
嫌だなあ、と彼女は笑って言う。
「あのねえ。私、警察官だしアンタの友達でもあるわけ。
何か隠してることくらいお見通しなの。いいから、話して」
そう強く言えば、Aの顔は歪む。
そして俯いてぽつぽつと言葉を吐き始めた。
「私…今度お見合いするんだ」
想像もしていなかった話に何も言葉が出ない。
土方がいるはずなのに、見合い。
訳が分からない状況に頭はショートしていた。
「…上も厄介なことを」
Aから話の経緯を聞き、思わず溜息をついてしまう。
「それ、土方さんに話したの?」
そう尋ねると、女は固まったままだ。
責任感の強い彼女のことだ。
きっと土方に迷惑をかけまいと一人で抱え込んでいるのだ。
そんな相棒が見ていられなくて。
「…分かった。協力する」
立ち上がり彼女の前に立つ。
潤んだ丸い瞳はこちらを捉えて、雫がひとつ落ちた。
警察組織というものは面倒な規律があるもので。
もし、Aと土方が婚姻関係となるならば、彼らは同じ職場にはいられない。
もし、Aが一番隊で生きていきたいのならば、婚姻関係を結ぶことができない。
残酷かつこの組織では当たり前の処遇だった。
(どうしたら、いいんだろ)
自分から言い出しておいて、千影は迷っていた。
Aの気持ちは痛いほどに分かる。
だから故に軽率にアドバイスができず、
「大丈夫。私がいるよ」
愛する相棒の肩を抱くことしかできなかった。
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Nattu(プロフ) - amefurasi750さん» コメントありがとうございます!とても嬉しいです;;銀魂のキャラはどの子も魅力的なので自分もそれをあまり崩したくない意識で書いていました^^どストライクとのお言葉嬉しすぎます;;本当にありがとうございました! (2022年12月13日 0時) (レス) id: 3f1ef1106e (このIDを非表示/違反報告)
amefurasi750(プロフ) - ありがとうございました!すごく心に残る話で、土方さんや沖田君たちの性格がそのままで安心して読むことができました!尚且つ土方さんと主人公ちゃんとのイチャイチャ具合がドストライクでした! (2022年12月8日 8時) (レス) @page32 id: 0bed4b2b02 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2022年9月1日 23時