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十壱 ページ11

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「お疲れ様です」



車を走らせ、小一時間。
遅れて現場に到着すれば、すでに仕事モードの彼女がそこに立っていた。
恋人を見る目は微塵もなかったが、それが彼女らしい気がしてほっとする。




「おう!A、久々だなあ」



しゃがみ込み、遺体に手を合わせる彼女に近藤は嬉しそうに声を上げた。
Aはすっと立ち上がり、




「お久しぶりです」




と端的に言って、すぐに事件詳細について聞いてきた。
近藤は、変わらないなという目で土方を一瞥した。

繁華街から外れた田舎町。
見慣れたネオンの看板やビルもひとつもなく、ただ田畑が広がっているような土地だ。

そこで起きた残虐な事件。
被害者がかぶき町在住で役人だったということもあり、土方達も駆り出されたのだ。
この事件より前にかぶき町では荒くれ者同士の連日に渡る町中で話題となっている抗争が起きているが、それを沖田や千影達に任せてきた。
それが所以して、こちらにくる隊士の数は足りない。




「すみません、こちらもついたばかりでざっとしか状況把握できてなくて」



「問題ない。突然、呼び出してしまって悪かったな」



「近藤さんや土方さんしか、こちらにはいらっしゃらなかったんですね」



「まあな…。あの状況じゃ、向こうに人手優先だからな」




そこで呼び出されたのが、Aだ。
要領が分からない頭でっかちな上の者を呼んだところであてにはならない。
松平にその旨を伝えれば、すぐに承諾してくれた。



「とはいっても、俺はすぐに向こうに戻るけどな」



「そうですか…まあ。そうですよね」



「だから、Aを呼んだんだ。


期待のホープだからな」



そう言って、近藤は期待した目でAを見る。
彼女は困ったように眉を下げて、



「尽力します」



と頷いた。
そして、ちらりと土方を見てまた近藤との会話に戻る。




「…では、土方さんがこちらに」



小声で話しているが、ざわめきの中から聞こえる愛しき声。
少しだけ不安そうな声で尋ねる彼女に、近藤は口角を上げるのを我慢して、



「おう。トシなら安心だ。



それに、





お前達の息はぴったりだしな」




意味ありげにそう言って、立ち上がって土方の肩をぽんと叩いて現場を離れる。
すぐに鑑識と話し始め、こちらと取り合う気もないようだ。

遺体を見ていたAは立ち上がり、土方に頭を下げて



「また、土方さんと仕事ができるなんて嬉しいです」



目を背けながらそう言った。

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設定タグ:銀魂 , 真選組 , 土方十四郎   
作品ジャンル:アニメ
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Nattu(プロフ) - amefurasi750さん» コメントありがとうございます!とても嬉しいです;;銀魂のキャラはどの子も魅力的なので自分もそれをあまり崩したくない意識で書いていました^^どストライクとのお言葉嬉しすぎます;;本当にありがとうございました! (2022年12月13日 0時) (レス) id: 3f1ef1106e (このIDを非表示/違反報告)
amefurasi750(プロフ) - ありがとうございました!すごく心に残る話で、土方さんや沖田君たちの性格がそのままで安心して読むことができました!尚且つ土方さんと主人公ちゃんとのイチャイチャ具合がドストライクでした! (2022年12月8日 8時) (レス) @page32 id: 0bed4b2b02 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Nattu | 作成日時:2022年9月1日 23時

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