十八 ページ18
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久しぶりの宴に楽しみなのか、鼻歌混じりの嬉しそうな上司は肩を組んで歩いてきた。
それをうざったく思いながらも、頭の中では別のことばかり。
「トシー久々にAと飲めるなんて楽しみだなあ」
そう言われ、ふと初めて酒を交わした飲み会のことを思い出す。
二人で抜け出すようにして縁側で酒を飲んでいたあの時から、きっとAに惹かれていて、それが今のように想いが通じているなんて想像もつかなかった。
まだ入ったばかりの彼女は未熟でありながらも眩しいと感じていたのは、彼女への好意というフィルターがかかっていたからであろうか。
近藤の楽しそうな声を聞きながら思考を巡らせているうちに、いつの間にか彼女の住む住居に辿り着く。
社宅ということもあり、少し古く質素な造りではあるが、建物のうち明るく光る一室から楽しそうな声が漏れてきて。
(元気そうでよかった)
ほっと胸を撫でおろしつつ、胸が高鳴っていく。
同僚同伴とはいえ、好いた女の家に上がるのは稀なことだ。
(一人じゃなくてよかった)
そう思いかけた時、
「じゃ。楽しんでなあ、トシ」
近藤は歯を見せて手をひらひらと振る。
一緒に行くと思い込んでいたが故に、思考が停止する。
「悪いが俺は今からとっつあんと飲む用事があってなあ。
その行き道にAの家があるから、ちょうどいいと思ってトシと一緒になっただけなんだあ」
「だからって一緒に行く必要ないだろう。用事は別なんだし」
「って言われても、お前一人だったら仕事だなんだって文句つけて行かないだろう」
上司は先のことを見通していた。
否、松平と手を組んでいたというべきか。
それに乗せられるようにして、こうして土方は目的地についてしまっていたのだ。
「トシも久しぶりに明日休みなんだし、少しくらい羽を伸ばすのも悪くないだろ」
そう言って、近藤は土方の肩を押す。
「Aが待ってるぞ」
「…言われなくたって、わあってるよ」
にこにこと笑っている近藤が想像ついて、すぐに背中を向ける。
重い足を歩ませ、彼女の家の前。
一息ついて、インターホンを鳴らせば、
「…あっ。ひじか、たさん。
来てくださったんですね、ありがとうございます」
まん丸な目であちこちを見ながら、困った顔を浮かべるAが出迎えてくれて、
(やっぱり、こいつのこんな顔が好きだ)
さっきまでの緊張が緩んでいく気がした。
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Nattu(プロフ) - amefurasi750さん» コメントありがとうございます!とても嬉しいです;;銀魂のキャラはどの子も魅力的なので自分もそれをあまり崩したくない意識で書いていました^^どストライクとのお言葉嬉しすぎます;;本当にありがとうございました! (2022年12月13日 0時) (レス) id: 3f1ef1106e (このIDを非表示/違反報告)
amefurasi750(プロフ) - ありがとうございました!すごく心に残る話で、土方さんや沖田君たちの性格がそのままで安心して読むことができました!尚且つ土方さんと主人公ちゃんとのイチャイチャ具合がドストライクでした! (2022年12月8日 8時) (レス) @page32 id: 0bed4b2b02 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2022年9月1日 23時