雨降る夜に待ち合わせを【桃】 (ページ37)

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「・・・・・・」

『・・・・・・』

「・・・なんか食べますか？」
　
　
『流石に俺ら食べ過ぎっすよ(笑)』
　
　
「そういえば昨日の夜から食べてばっかだ(笑)」
　
　
　
　

　
出勤前のこの時間
　
　
普段だったらこんなにゆっくりすることもない
　
　
しかも "友達” となんて
　
　
　

　
　
外が車の走る音や子供たちの声、井戸端会議をする住人の声で賑やかになり始めた
　
　
この室内ではそれらの音がよく聞こえる
　
　
　
『いい朝っすね、自分の家ではこんな生活音聞くことないんで新鮮で気持ちいいわ』
　
　
「小瀧くんの家は・・・いや、なんでもない」
　
　
『ん？』
　
　
「いや大丈夫」
　
　
『そう』
　
　

　
　
しばらくして私たちはコーヒーを飲み終えた
　
　
　
　
　
『じゃあそろそろほんまに帰りますね』
　
　
「はい。色々と迷惑かけてすみませんでした」
　
　
『それはもうお互い様ですから、気にしやんといてください』
　
　
「ありがとうございます」
　
　
『ほな色々とお世話になりました、また連絡しますね』
　
　
「分かりました、帰り気をつけてくださいね」
　
　
『おじゃましました』

　

　
　
彼はたたんで紙袋に入れておいた服に着替え、
　
　
この家に来た時と同じ格好で出て行った
　
　
髪の毛には寝癖を付けて
　
　
　
　
　
　
　
ふぅっと一息ついてリビングに戻ると
　
　
さっきまでいた小瀧くんの匂いが微かに残っていて
　
　
少しだけ寂しいなんて思ってしまう
　
　

　

「たしかにさっきまでここに小瀧望がいたんだよね」

　
　
　
　
　
余韻に浸る間も無く、迫る出勤時間に向けて仕事の準備をする
　
　
　

　
きっと知らずのうちに何かの心境の変化が起こっていたのかもしれない
　
　
　
　
　

　
いつもは塗らないリップを薄ら唇に滑らせた