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”あれ？神田さんなんかいつもと雰囲気違いません？”
”あ、本当だ！なんかいつもより可愛い〜”
”どうしたんですか？恋ですか〜？”
会社に着くなり同僚からの反応には苦労した
きっといつもは色づいていない唇のせいだとは思うのだけれど
たったこれだけのことで印象って変わるんだと
内心少しだけ嬉しい気持ちになる
仕事中、小瀧くんのことを思い出す暇はなかった
会社に着くまでは昨日のことを思い出して
仕事にならないんじゃないかと心配したけれど
そんな心配するだけ損だった
気づけば退勤時間
それでも終わることのない仕事
今日もしっかり残業をこなし、退勤したのは22時近くなった頃
携帯のディスプレイには新着のニュースが数件と
”小瀧望”の文字
”また連絡しますね”
そういえば今朝、別れ際に言ってたな
律儀な人だ、と思いながら通知を開く
” こんばんは、仕事お疲れ様です
昨日はお世話になりました、ありがとう
色々と気張って疲れたと思うので
今日はゆっくり休んでください”
私も似たような内容の返信をした
内容的には笑みが溢れる程のものではなかったのに
私は終始口元を緩めながら家路についた
「ただいまー」
部屋に入るともう小瀧くんの匂いはすっかり消えていた
今朝は急いで家を出たせいで、まともに片付けが出来ていない
「さて、と」
放置されっぱなしの紙袋
流しに置いたままの２つのマグカップ
少しシミになったカーペット
ねじれたままたたんである布団
脱いで置かれた男物のTシャツとスウェット
片付く部屋とは反対に溢れ出してくる昨日の記憶
「会いたいな・・・」
無意識に声に出てしまうほどに感情は抑えが効かない
自分にブレーキをかけながら、なんとか部屋はいつも通りになった
「ん？」
ソファーの溝に光るものを見つけた
「ピアスだ」
そこに挟まっていたのはシルバーのリングピアスだった
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作者名：弦 | 作成日時：2020年7月13日 6時
