【歌い手】紋章。【男主】

しち。 ページ9

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う｢名前が凄い物騒なんだが…｣



ま｢でも！すっごい良い子ですよ！？僕を元気付けようとこの子くれたんですし…！｣



ずいっと薄ぼんやり光る猫を近付ければ茶髪からスラリと伸びる整った鼻筋へ、肉球たしっ。


驚き瞠る緑の瞳とたっぷり交わり、空気に溶けるように光の粒子となる猫。


慌てる者を無視しその体は少し離れた地面にて再構築され、数歩進みまふまふ達を振り返ってゆらゆら招くように尻尾を揺らす。


まふまふが一歩踏み出せば少し進み止まって振り返る。


ついておいで、とでも言うようなその姿にふらりと白銀(まふまふ)が導かれる。


それを見て赤と茶、顔を見合わせ追う。


猫が歩む先、ちょこんと座した小さな背。



ま｢…っ！？そらるさん！？｣



小さな彼(ディザスト)の膝へ頭を預けているらしく、仄かに見える群青。


力無く横たわっている、少年の倍程の体躯。


駆け寄ろうとしたまふまふ。


されど透明な壁に阻まれる。



ま｢障壁！？…だったら、【断罪ノ天使】ｯ！｣



まふまふに呼応し、巨大な十字架と書物を携え舞い降りる天使。


パラパラと独りでに捲れる書物の頁、輝きを増す十字架。


放たれる十字の輝き。


罪の重さに応じて強まるその輝きは目を刺し潰さんばかりで、



ま｢っ、どれだけの罪を…！？｣



放たれた輝く十字が周囲に同化しているかのように透明な障壁を削り、火花を散らす。


互角の耐久度。


キラキラ魔力の残滓を舞わせ、双方が消滅する。


駆け寄る3人、動かぬ2人。



ま｢そらるさん…っ！｣



近付いて漸く見えた、小さな背に隠れたそらるの全身。


口元から肩まで真っ赤に染まり、閉ざされた青の瞳。


自身の膝に乗るそれをじっと見下ろす、闇色のガラス玉。


その袖は、真っ赤っ赤。


紅色の瞳が見開かれ綺麗な唇から絶叫を上げてそらるを守るように抱き締め奪い取り、ディザストを魔力を叩き付け弾き飛ばす。



ま｢そらるさんに、何したんですか…っ！？｣



涙浮かぶ紅の瞳でそらるを抱き締めたまま地に転がるディザストを睨み付ける。


それを背に庇うように少々身長差のある、赤と茶。


ゆらゆらと何とか立ち上がったディザストがそれを見て何を思ったのだろうか。


向けられた敵意に、小さく揺れた闇色のガラス玉の奥。


逃げるように踵を返しふわりと大気に消える。



｢──ごめん｣



風に乗って彼らへ届いた小さな声。


癖の強い群青の下、ぴくりと瞼が震えた。





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