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010/こぼれる思い出 ページ10

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刃物の登場に銀時の身が固くなる。


「大丈夫だよ、銀時。先生はわたしの髪を切ってくれるだけだから」


Aが安心させるように声を低めて囁く。
けれど銀時はまだ警戒するようにハサミと松陽を見比べた。

まるで、Aを傷つけたら殺す、と言っているような眼光の鋭さだった。

その視線をものともせず、松陽はAの前に座った。


「銀時。すみませんが、そこのちり箱を取ってください」


そこの、と銀時の斜め後ろを指差す。
銀時はじっと松陽を見据えたままちり箱に手を伸ばした。


「A、目を瞑っていてくださいね。……ありがとう、銀時」


Aはドキドキと緊張で荒ぶる鼓動を聞きながら、目を閉じた。
ちり箱にかぶせられたビニル袋が銀時から松陽に渡され、くしゃっと音を立てる。骨ばった指先が額をかすめ、前髪を持ち上げた。


「眉毛がちょっと隠れるくらいまでにしましょうか」

「はい」


ひんやりと冷たく、重たいハサミがザクっという音と共にAの髪を切り落とす。

みるみる軽くなっていく前髪。パサパサと軽い音を立てながらちり箱に落ちていく前髪。
その音がAの脳裏に父の姿を思い出させるのには十分すぎるものだった。

ツンと鼻の奥が痛んで、強く閉じた目の縁から涙がこぼれた。


「A?」

「ごめ、なさい。……ち、父のことを……思い出して、しまって」


嗚咽をこらえながら答え、Aはなんてことないように口角を押し上げた。


「君のお父さんはどのような方なんですか?」


松陽の声は穏やかだった。
春に降り注ぐきいろい日差しのような、柔らかでぬくもりを感じた。

そのぬくもりに背中を押された。

今まで思い出そうともしなかった父との思い出を、Aは小さな声で語り始めた。


「父はわたしに銃の扱い方を教えてくれました。とても背が大きくて、顔はクマのように怖かったけど……でも怒ったところは一度も見たことがありませんでした」


毛先を揃えるために、かすかに震えたハサミがぴたりと額にくっつく。

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弥生 - そして先生と夢主って…!と思います^_^; (2021年11月2日 10時) (レス) id: fbe43e3660 (このIDを非表示/違反報告)
弥生 - 銀さんとのやりとりかわいい…! (2021年10月28日 12時) (レス) @page12 id: fbe43e3660 (このIDを非表示/違反報告)
弥生 - 自分のペースで良いですよ!(*^^*)夢主の成長が楽しみです!(*^◯^*) (2021年10月17日 10時) (レス) id: fbe43e3660 (このIDを非表示/違反報告)
ふじ(プロフ) - 弥生さん» 弥生さん、コメントありがとうございます!最近更新ができていなくてすみません🙇‍♂️これからぼちぼち更新していこうと思っています!どうぞよろしくお願いします🥳 (2021年10月10日 12時) (レス) @page10 id: 9f078bb16b (このIDを非表示/違反報告)
弥生 - 夢主と銀さんの絡み方が可愛いですっ╰(*´︶`*)╯夢主の父親はどんな人かとか気になりますっ!続き楽しみです!(*^^*) (2021年10月6日 9時) (レス) @page10 id: fbe43e3660 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ふじ | 作成日時:2021年9月20日 0時

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