009/少女の髪 ページ9
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ぎんとき、銀時。
何度も何度もAは口の中で彼の名を呟く。
意外にもすんなりと、その名前はAの中に入ってきた。
「銀時」
「……なに」
試しに呼べば、少しの沈黙の後返事があった。
顔がほころぶ。
本当に、素敵な名前だと思った。
彼にピッタリだと。
「なんでもない!」
「なんだよ、それ」
不機嫌そうだった顔がさらに斜めに傾く。
Aは大急ぎで「ごめんね」と謝った。
ただ名前を呼んでみただけ、と言ったらもっと口をへの字に曲げそうだったから。
「あ! わたし、まだ名乗ってませんでしたよね?」
名前で思い出した。
Aは松陽に自身の名を伝えていなかったのだ。それどころではなかったというか、そこまで気が回らなかったというか。
「わたし、新島Aと言います。これからよろしくお願いします。松陽……先生」
ぺこり、と頭を下げる。
寺子屋をしていて、そこで勉学を教わるのなら先生と呼んだほうがいい気がした。
「……A、目を見ても構いませんか?」
銀時の隣に腰を下ろし、もう一度頭を下げる。
そんなAに、松陽が問いかけた。
Aは一瞬不思議そうな顔をして、長い前髪に触れた。
長くなったAの髪を切ってくれたのはいつも父だった。
本当の、血の繋がった親子ではなかったけれど、Aは父を本物の父親だと今も思っている。
でももう、髪を切りそろえてくれた父はいない。
床に伏せ、病に蝕まれながら、Aを愛してくれた父はいない。
家がからっぽになってしまったあの日から、Aは髪を切るのをやめていた。
この髪を切ってくれる人はいなくなったから。
「もしよければ、きちんと目が見えるように前髪を切って、その長い綺麗な髪も揃えましょう」
まだ出会って数時間。
お互いのこともぜんぜん知らない。
それなのに、優しく、穏やかに微笑みかけてくれるこの人ならば、もしかしたら。
「……お願い、します」
Aが頷くと、松陽は嬉しそうに立ち上がり、部屋の箪笥から髪切りバサミを取り出した。
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弥生 - そして先生と夢主って…!と思います^_^; (2021年11月2日 10時) (レス) id: fbe43e3660 (このIDを非表示/違反報告)
弥生 - 銀さんとのやりとりかわいい…! (2021年10月28日 12時) (レス) @page12 id: fbe43e3660 (このIDを非表示/違反報告)
弥生 - 自分のペースで良いですよ!(*^^*)夢主の成長が楽しみです!(*^◯^*) (2021年10月17日 10時) (レス) id: fbe43e3660 (このIDを非表示/違反報告)
ふじ(プロフ) - 弥生さん» 弥生さん、コメントありがとうございます!最近更新ができていなくてすみません🙇♂️これからぼちぼち更新していこうと思っています!どうぞよろしくお願いします🥳 (2021年10月10日 12時) (レス) @page10 id: 9f078bb16b (このIDを非表示/違反報告)
弥生 - 夢主と銀さんの絡み方が可愛いですっ╰(*´︶`*)╯夢主の父親はどんな人かとか気になりますっ!続き楽しみです!(*^^*) (2021年10月6日 9時) (レス) @page10 id: fbe43e3660 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ふじ | 作成日時:2021年9月20日 0時