006／あたたかい手のひら ページ6
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「どこに、向かっているんですか？」
松陽の足に迷いはなく、戦場からずいぶん離れたところを歩いているのはわかった。だが、松陽の目指す先がどこなのかはAにはわからなかった。
「松下村塾ですよ」
しょ、うかそんじゅく？
塾、ということは寺子屋だろうか。
聞いたことのない名前だった。
Aと彼は揃ってぱちぱちと目を瞬かせた。
「私、寺子屋を営んでいるんです。そこに住んでいて、君たちのような年頃の子たちに勉学を教えているんです」
なんとなく、Aには松陽が勉強を教えている姿が違和感なく浮かんだ。
吉田松陽という男はこうして孤児の子を拾ってきては寺子屋に招き、世話をしているらしい。
色んな子がいるんですよ、と松陽は楽しそうに話す。
しっかり者の八重。
松下村塾一の元気っ子、ケン。
賢く、物静かないおり。
松陽の口からぽろぽろこぼれる見知らぬ人の名前。
名前とどんな性格かを言われても、顔がわからないから想像のしようもない。
隣を歩く彼はすでに興味をなくしていて、足元で石ころを蹴っていた。
「じゃあ、これからわたしたちはその松下村塾に行って、アナタから勉学を教わるんですか？」
「えぇ。そういうことになりますね」
勉強なんていつしただろうか。
父が死ぬ前は一週間に一度の頻度で文字を教えてもらっていた。
だがそれももう数年前のことだ。
「どうしましたか？」
父のことを思い出し、ツキン、と胸が痛んだ。
俯いてしまったAに松陽がそっと聞く。
彼もどこか不安そうにAの顔を覗き込んだ。
「あ、えっと……べ、勉強にちゃんとついて行けるかなって不安になって」
本音八割、嘘二割。
取り繕うように早口で言うA。
松陽はちょっと考えていたが、すぐにAの不安など吹き飛ばしそうな朗らかな表情で笑った。
「大丈夫。松下村塾には勉強が得意な子やそうでない子。剣術の稽古が好きな子や嫌いな子など、たくさんの子が集まっています」
松陽の手がAを優しく撫でた。
「だから、大丈夫。様々な子がいるんですから」
大きくて
乾燥していて
刀だこがある
そして、
あたたかい。
父の手のひらのようだった。
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弥生 - そして先生と夢主って…!と思います^_^; (2021年11月2日 10時) (
レス) id: fbe43e3660 (このIDを非表示/違反報告)
弥生 - 銀さんとのやりとりかわいい…! (2021年10月28日 12時) (レス) @page12 id: fbe43e3660 (このIDを非表示/違反報告)
弥生 - 自分のペースで良いですよ!(*^^*)夢主の成長が楽しみです!(*^◯^*) (2021年10月17日 10時) (レス) id: fbe43e3660 (このIDを非表示/違反報告)
ふじ(プロフ) - 弥生さん» 弥生さん、コメントありがとうございます！最近更新ができていなくてすみません🙇♂️これからぼちぼち更新していこうと思っています！どうぞよろしくお願いします🥳 (2021年10月10日 12時) (レス) @page10 id: 9f078bb16b (このIDを非表示/違反報告)
弥生 - 夢主と銀さんの絡み方が可愛いですっ╰(*´︶`*)╯夢主の父親はどんな人かとか気になりますっ！続き楽しみです！(*^^*) (2021年10月6日 9時) (レス) @page10 id: fbe43e3660 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ふじ | 作成日時：2021年9月20日 0時
