004/舞い降りた一羽の鴉 ページ4
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ぽふん、と大きな手がAの頭の上に乗せられた。
「はじめまして」
「A!!」
Aと同じ、亜麻色の長髪の男性が微笑みかける。
声を出そうとしたとき、強く腕を引かれ、男とAの間に彼が割り込んだ。
刀を握り、警戒するように男を睨みつけている。
「屍を喰らう鬼が二匹いると聞いて来てみれば……」
だが男はそんな刀など目に入らぬかのように、
彼の殺気など感じていないかのように、
ただただ、穏やかに、冬の湖面のように静かに微笑んでいた。
その顔が、表情がこの場所と合わず、ちぐはぐで、言葉にできない気味悪さがAの口内をちくちくと刺激する。
使えないとしても、威嚇のためにAは銃口を男の心臓へと向ける。
「とても可愛い小鬼が二匹いたものです」
銃も、もう弾切れで使えない。
男の腰には一本の刀が差してある。
体格的にも、Aと彼が二人がかりでかかっても勝てるはずがなかった。
「A、はやく、どこか遠くへ――」
「
だが、Aの体は動かなかった。
「たった二人で屍の身ぐるみをはぎ、そうして自分の身を護ってきたんですか。……たいしたもんじゃないですか」
なぜか、この男を前にして、逃げなければならないという思いがなくなった。
この男が自分たちを殺すことはないという確信が、Aの中にはあった。
「他人に怯え、自分を護るためだけにふるう剣なんて、構える銃なんて、もう捨てちゃいなさい」
男は腰の刀に手をかけた。
彼はいつまでも襲ってこない男に毒気を抜かれたように立っていたが、その動きを見てすぐさま全身に力を込める。
それとは対照的に、Aは構えていた銃を、おろした。
「くれてあげますよ、私の剣」
ひょいっと無造作に刀が放り投げられ、彼はキャッチしたものの、重さでふらふらと後退した。Aは慌ててその背中を支える。
呆然とするAと彼の前で、男はくるりと背を向けた。
「そいつの使い方を知りたければついてくるといい。これからはそいつをふるいなさい」
男の声は、Aと彼の心にそれからずっと残ることになる。
「敵を斬るためではない。弱き己を斬るために。己を護るのではない」
己の魂を護るために
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弥生 - そして先生と夢主って…!と思います^_^; (2021年11月2日 10時) (レス) id: fbe43e3660 (このIDを非表示/違反報告)
弥生 - 銀さんとのやりとりかわいい…! (2021年10月28日 12時) (レス) @page12 id: fbe43e3660 (このIDを非表示/違反報告)
弥生 - 自分のペースで良いですよ!(*^^*)夢主の成長が楽しみです!(*^◯^*) (2021年10月17日 10時) (レス) id: fbe43e3660 (このIDを非表示/違反報告)
ふじ(プロフ) - 弥生さん» 弥生さん、コメントありがとうございます!最近更新ができていなくてすみません🙇♂️これからぼちぼち更新していこうと思っています!どうぞよろしくお願いします🥳 (2021年10月10日 12時) (レス) @page10 id: 9f078bb16b (このIDを非表示/違反報告)
弥生 - 夢主と銀さんの絡み方が可愛いですっ╰(*´︶`*)╯夢主の父親はどんな人かとか気になりますっ!続き楽しみです!(*^^*) (2021年10月6日 9時) (レス) @page10 id: fbe43e3660 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ふじ | 作成日時:2021年9月20日 0時