小さな絶望の積み重ね ページ9
「監視カメラにはなにも映ってなかったんだよね？」
「えぇ。被害者以外は少年が一名のみです」
「じゃあ犯人は呪霊？」
「まぁ、そうですね」
犯人が残したであろう残穢は屋上へと続いていた。
長い階段を登り、先にあったドアを開ける。
雨はまだ降っていた。
「あの少年がやった可能性もなくはないですが。そちらの身元特定は警察の――」
不意に七海の言葉が途切れた。
開かれたビニール傘越しにAはそれと目が合った。
四つん這いで、背骨がぼっこりと浮き出ている呪霊。歯茎が盛り上がり、左手首に腕時計がつけられていることに違和感を感じる。
しかしその違和感を考える前に、Aは傘を放り投げ、身をかがめた。
「ストップ」
今にも飛び出しそうなAを七海の左手が制する。
「こちらは私が片づけます。虎杖さんはそちらのもう一体を」
Aの斜め後ろの物陰にもう一体がじっとこちらを見つめていた。
何度見ても、呪霊の姿は不気味だ。
「勝てないと判断したら呼んでください」
「……ちょっとナメすぎじゃない？ あたしのこと」
いつまでも出来損ないのAではない。
呪力の使い方だって覚えた。新しい技も身につけた。
今なら、あれくらいの敵、倒すことなど容易だろう。
「ナメるナメないの話ではありません。先ほども言いましたが、私は大人で君は子ども。私には君を自分より優先する義務があります」
「そりゃありがたいね」
七海はスーツのジャケットのボタンに手をかけた。
「君はいくつか死線を越えてきた。でもそれで大人になったわけじゃない」
開いたジャケットが風にあおられてはためく。
「枕元の抜け毛が増えていたり、お気に入りの惣菜パンがコンビニから姿を消したり」
七海は右手を背中に回し、
「そういう小さな絶望の積み重ねが、人を大人にするのです」
刀身が布で巻かれた大鉈が、姿を現した。
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柊(プロフ) - ハルヒさん» ハルヒさん、コメントありがとうございます！私もこの2人が大好きなんです〜！応援ありがとうございます！頑張ります！！ (2021年1月13日 23時) (
レス) id: 64b7ea7410 (このIDを非表示/違反報告)
ハルヒ(プロフ) - ヒェッ…ナナミン好きやからこの2人のカプ嬉しい…応援してます頑張ってください！！！ (2021年1月13日 23時) (レス) id: 46554589d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：柊 | 作成日時：2021年1月6日 0時
