恋敵 ページ5
「七海ィ、なんかおもしろい話してぇ〜」
「……」
「よしわかった! じゃあ廃棄のおにぎりでキャッチボールしながら政教分離について語ろうぜ!」
「お一人で勝手にやって勝手に炎上してください」
高専の談話室。
ほとんど人は出払っており、だだっ広い部屋にはいつも通りのうざったいテンションの五条と、英字新聞をめくる七海だけがいた。
「五条悟の大好きなところで山手線ゲーム! はい全部!」
「その調子で頼みますよ」
五条の叩いた手拍子だけがむなしく響いた。
「今の虎杖さんにはそういう馬鹿さが必要ですから」
目を真っ赤にするまで泣き腫らしたAの顔が七海の脳裏をよぎる。無意識のうちに新聞を握る手に力がこもった。
ソファーの背もたれに思い切りもたれた五条は目隠しの上から額をかく。
「重めってそういう意味じゃなかったんだけどなぁ……」
五条はAが泣いているところや弱音を吐いているところを直接見たわけではないが、彼女のまとう空気が変わったのには気づいていた。
あえて触れてはいないが。
「吉野って子の家にあった指についてAに――」
「言ってません。彼女の場合、不要な責任を感じるでしょう」
「お前に任せてよかったよ」
ぱらり、と新聞をめくる音が沈黙の間を縫う。
五条は前から気になっていた疑問が口からこぼれ落ちるのを理解していながら聞いた。
「七海ってさ、Aのこと好きなの?」
ぱらり、
「彼女を嫌いになる人はそういないでしょう」
「……そりゃそうだけど、そうじゃなくてさ」
新聞をめくる手が止まる。
サングラスで七海の目は見えないが、五条にはわかった。
「それ、読んでる?」
「えぇ」
「の、割には目が動いてないけど?」
「…………」
はぁああ、と七海のわざとらしい大きなため息が五条をぎゅうぎゅう押す。
五条はニヤッと口角をあげて、身を乗り出した。
「で? どうなの?」
「そんなに聞きたいのならまずはその殺気をしまってください」
面倒くさそうに言われた七海の言葉に、五条は笑みを引っ込める。
「いやぁ、僕も驚いてるんだよねぇ。だってただの一生徒にこの僕が! この僕がだよ? 親愛以上の気持ちを持っちゃうなんてさ! Aは末恐ろしい子だねぇ」
声は笑っているが、心の奥は笑っていない。
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柊(プロフ) - あーさーさん» あーさーさん、コメントありがとうございます!虎杖ちゃんかわいいですよね!そう言っていただけて嬉しいです!オチはナナミンで決定しています。今のところ伏黒くんルートは考えておりません……。申し訳ないです汗 更新がんばります! (2021年6月5日 7時) (レス) id: 64b7ea7410 (このIDを非表示/違反報告)
あーさー(プロフ) - コメント失礼します!虎杖ちゃんが可愛すぎませんか??もうこれは推すしかないなぁと思いました!落ちはナナミンで決定ですか?もしよければ恵ルートを書いて頂けないでしょうか...あくまでも一意見なので無視してもらっても全然大丈夫です!更新楽しみにしてます! (2021年6月5日 0時) (レス) id: 300c895943 (このIDを非表示/違反報告)
柊(プロフ) - すぴさん» すぴさん、コメントありがとうございます!一気読みもありがとうございます!うれしいです!東堂くんとの会話は書いてて私も楽しいです!この先もハチャメチャになる、かも……!これからもよろしくお願いします! (2021年4月30日 13時) (レス) id: 64b7ea7410 (このIDを非表示/違反報告)
すぴ(プロフ) - とても面白くて一気読みしてしまいました!東堂くんとの会話めちゃくちゃ面白くて好きです!更新楽しみにしてます^ ^ (2021年4月30日 9時) (レス) id: 4a1a097f66 (このIDを非表示/違反報告)
柊(プロフ) - 餅さん» 餅さんコメントありがとうございます!一気読み……ありがとうございます!虎杖ちゃんかわいいですよね!東堂くんとの絡み、かなりハチャメチャになりそうです笑 応援ありがとうございます! (2021年4月18日 19時) (レス) id: 64b7ea7410 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柊 | 作成日時:2021年3月7日 0時