65.キオク ページ15
○
ある、雷の日の夜でした。
私は親戚の家に引き取られ、なれない寝室で
暗闇を見つめていました。
夜。眠れない私がじぃっと見つめていた暗闇から、
じんわり人の形をした影が浮き上がりました。
影はだんだんと濃くなり、私に話しかけました。
「こっちにおいで。」
私はなんだかその言葉が救いのように思えました。
自分はこの世に向いていない人間だと感じて
いたからでした。
その影に手を伸ばし、触れようとしたときでした。
「……A、どうした？」
隣で寝ていた新隆お兄ちゃんが私の腕を
掴んだのです。
寝ていたはずの彼でしたが、何かの勘が働いた
のでしょうか。こちらを見る顔は真剣でした。
「……なんでもないよ。」
「嘘つけ、どっか行こうとしてただろ。トイレか？」
「……。」
私がお兄ちゃんから目をそらし、もう一度影の方
を見ると、人の形は無くなっていました。
私は影について行こうとしたのにも関わらず、
何故か消えていたことにホッとしていました。
本当は怖かったのかもしれません。
しかし、これで事は終わりませんでした。
次の雷の日の夜も、影は私のもとへ現れました。
しかも数が少し増えていました。
次の次の雷の夜も、そのまた次も。
雷の日には、影は絶対に現れました。
そのたびに数を増やしながら。
私は怖くなりました。
ようやく幽霊が恐ろしいものなのだということを
思い知ったのです。それまで、私は幽霊を怖いと
感じたことが一度もなかったのです。
私は雷が嫌いになりました。
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みかん - 面白いです！続き気になる…更新待ってます！ (2月7日 23時) (
レス) @page19 id: 460144ffaa (このIDを非表示/違反報告)
通りすがりのバカ - めっちゃ好きです！続きが気になります！ (2023年1月10日 11時) (レス) @page19 id: 04cd5210b5 (このIDを非表示/違反報告)
かっち(プロフ) - すみません…面白すぎます…。嫉妬すら出来ないレベルで…続きまってます！大好きです！！ (2022年12月30日 17時) (レス) id: 1b6cbbdaba (このIDを非表示/違反報告)
ただのアニメ好き☆(プロフ) - ものっすごく！お話面白くて素敵です！更新待ってます！高評価とお気に入り登録させていただきました！ (2019年3月24日 11時) (レス) id: 4ee9350697 (このIDを非表示/違反報告)
HARU(プロフ) - えぇ、めっちゃ気になる… (2019年3月6日 23時) (レス) id: ee202a18ba (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時：2017年8月18日 23時
