138.トキヤとHAYATO。そして… ページ50
一ノ瀬さんの心境に不安はあったが、私はステージには行かず、そのまま帰った。
もし春ちゃん達に会ったら?
私は、上手いこと言い逃れができない気がした。
何より、一ノ瀬さんに見つかるのが怖い。
勘づかれるのが嫌だった。
**
春ちゃんの様子がおかしい。
そう思ったのは、例のライブが終わって、学校で会った時だった。
「春ちゃん、この前HAYATOのライブに行ったんだってね」
「へ!?あ、うん…」
「楽しかった?」
「…………」
「春ちゃん…?」
「え、あ、HAYATO様って、実在したんだなって…思って…」
浮かない顔の春ちゃん。
アニメ通りだな。
春ちゃんは、HAYATOの正体が一ノ瀬トキヤだと分かった。
だから、混乱しているんだろう。
私は何も追求はせず、そっかーと適当に流した。
**
一方、一ノ瀬さんの歌声には心がこもってきたと、龍也先生は言う。
「ただな…」
「ん?」
「お前はアイツの事情を知っているから言うが…」
「一ノ瀬トキヤとして歌えているが、HAYATOとして歌えてない」
「え…」
あのライブを見ていた龍也先生は、歌にハートがないと思ったようだ。
しかし、授業ではハートがある。
つまり、本当の自分では歌えるが、HAYATOとして歌えなくなっている。
「何で…」
「さぁな。
ただ、これでいいのかもしれない」
「…HAYATOではなく、一ノ瀬トキヤとして、デビュー出来るかもしれないから、ですか」
「あぁ。
アイツにとっても、それがいい傾向だとは思うが…」
問題はHAYATOの事務所。
そう。ここからが一ノ瀬さんにとって大事な時期になる。
HAYATOとしての仕事が増えて、歌の仕事が減る。
恐らく、クラス降格の話はないだろうが、それでも一ノ瀬さんは大変なことになる。
「…頑張って欲しいです」
「そうだな」
「で、何の用ですか」
実は、今は放課後。
いるのは学園長室。
私は、シャイニングに呼び出されてここにいる。
「呼んだ張本人がいないし」
「あー、話が脱線したな、悪い。
おっさんは急な仕事で出て行った」
「何だそりゃ」
「で、話なんだが…」
「はい」
「お前は、夏季合宿の後にこの学園から卒業することになった」
「…え、あ、はい」
ショックでもなければ、悲しくもない。
もしかしたらと思ってはいた。
「…あまり驚いてないな」
「シャイニングから言われた目標は、達成したと思っていたので…」
新曲は作ったし、友達も出来た。
……寂しくないと言ったら嘘になるけど。
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恭(プロフ) - はじめまして、ノルノネの方もこちらの方も楽しく読ませていただいてます。更新を再開していただけたら幸いです。 (2017年11月7日 16時) (レス) id: 6cce78c8ac (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - ねぎさん» ノルノネの作品も読んでいて下さるんですか!?ありがとうございます!!テスト週間に入ってしまい、そちらに専念するのでしばらく更新が出来ません。大変申し訳ございません。終わり次第、また更新します!! (2017年2月22日 7時) (レス) id: d612dec37b (このIDを非表示/違反報告)
ねぎ - ノルンノネットの作品もこのうたプリの作品もとっても読んでいてワクワクする小説で私のお気に入りです。更新が止まってしまっていますがまた更新してくれることを楽しみに待っていますね!!頑張ってください。 (2017年2月21日 3時) (レス) id: 4d5fa3e4b6 (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - 藍音さん» ありがとうございます!!更新が遅くなっていて申し訳ないです。頑張って更新できるようにします! (2016年12月19日 16時) (レス) id: d612dec37b (このIDを非表示/違反報告)
藍音(プロフ) - 凄く楽しんで読んでます。これからも更新頑張ってください! (2016年12月17日 20時) (レス) id: 1412c3226a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:のん | 作成日時:2016年5月22日 13時