122.少しだけ羨ましい ページ34
その後、来栖くんは翔子ちゃん化していた。
予想以上に可愛くて、つい写真を撮ってしまったけれど、来栖くんは許してくれた。
一十木くん、聖川さん、四ノ宮さんも女装していた。
特に聖川さんの女装は…うん、女子をやめたくなるくらい尊かった。
そんな水球大会から一日。
"いい方法がある"と言っていた友ちゃんは、放課後のレッスン室に神宮寺さんを呼び出した。
「どうしたのかな、子羊ちゃん」
「あ、あの…ですね…」
上のセリフは、私じゃない。
神宮寺さんと春ちゃんのだ。
本当に用がある私は、友ちゃんと一緒に廊下にいる。
レッスン室の扉をほんの僅かに開けて、部屋の中から私達が見えない所に座って、いわゆる盗み聞きをしている。
「子羊ちゃんからのお呼び出しは、とても嬉しいよ。
何のご用かな?」
先程、友ちゃんが呼び出したと言ったが、あれは正しくは"春ちゃんが神宮寺さんに用事があると言っていた"と、友ちゃんが神宮寺さんに伝えたのだ。
そしてまた、春ちゃんの用事というのは嘘。
春ちゃんからの呼び出しなら、絶対来るだろうという友ちゃんの予想。
それは見事に的中した。
「えっと…ですね…。
お、音楽を…じゃなくて、ピアノを聞いて欲しかったんです!!」
「オレに?
嬉しいな、大歓迎だよ」
春ちゃんには、数十分間だけ神宮寺さんの相手をして欲しいと頼んだ。
「ピアノを聞いてほしいって…」
「春ちゃんらしい用事だね。
神宮寺さんもまんざらじゃなさそう」
廊下でコソコソと話す。
喉の痛みは、一ノ瀬さんから貰ったのど飴のお陰か、すっかり消えていた。
「何を弾いてくれるんだい?」
「そう、ですね…」
声が小さくなった。
何を話しているのか聞こえない。
しばらくすると、部屋からピアノの音が聞こえ始めた。
とても繊細で、綺麗な音。
「…友ちゃん、この曲知ってる?」
「いーや、知らない。
部屋でも弾いてないと思う」
聞こえてくる曲は、アニメでも使っていない、聞いたことのない曲だった。
「…即興?」
「春歌なら、やってもおかしくないわ」
友ちゃんは感心したように言った。
即興で、こんなに綺麗で、激しさがある曲を…。
「流石、春ちゃんだね」
ミューズに愛されているから。
才能があるから。
沢山の人に愛されて、私みたいにこんなに問題を起こさない。
純粋で真っ直ぐで、優しくて。
私が持ってないものを持ってる。
それは、自分では補えないから私はいらない。
でも、少しだけ羨ましい……―――。
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恭(プロフ) - はじめまして、ノルノネの方もこちらの方も楽しく読ませていただいてます。更新を再開していただけたら幸いです。 (2017年11月7日 16時) (レス) id: 6cce78c8ac (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - ねぎさん» ノルノネの作品も読んでいて下さるんですか!?ありがとうございます!!テスト週間に入ってしまい、そちらに専念するのでしばらく更新が出来ません。大変申し訳ございません。終わり次第、また更新します!! (2017年2月22日 7時) (レス) id: d612dec37b (このIDを非表示/違反報告)
ねぎ - ノルンノネットの作品もこのうたプリの作品もとっても読んでいてワクワクする小説で私のお気に入りです。更新が止まってしまっていますがまた更新してくれることを楽しみに待っていますね!!頑張ってください。 (2017年2月21日 3時) (レス) id: 4d5fa3e4b6 (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - 藍音さん» ありがとうございます!!更新が遅くなっていて申し訳ないです。頑張って更新できるようにします! (2016年12月19日 16時) (レス) id: d612dec37b (このIDを非表示/違反報告)
藍音(プロフ) - 凄く楽しんで読んでます。これからも更新頑張ってください! (2016年12月17日 20時) (レス) id: 1412c3226a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:のん | 作成日時:2016年5月22日 13時