【うたプリ】高嶺の花(？)の少女は色々難ありのようで Part3

107.失態 レンside ページ19

『レン、どこにいるの？
用事終わった？
待ってるから、早く来て！』

携帯に届いたメールを読み返し、オレは文字を打った。

『ごめん。
用事が終わりそうにないんだ。
明日、一緒に出掛けよう？』

出掛けよう、と打ったところで、オレはあの時のことを思い出した。

"遠慮します"

"私なんて構ってないで"

嫌そうな顔だった。
何かを激しく拒絶している顔。
それが他のレディ達のことだと、すぐに分かった。

オレが君に関わると、他のレディが嫉妬する。

君に、何かがあっては遅い。

そう思って、守りたくて、オレは君から離れた。


―――なのに。



"早く会いたいなぁ…"


携帯を見ながら呟いたその言葉は、やけに耳に響いた。
表情は見えなかった。
でも、オレが声をかけた時のあの動揺ぶりからして、意識が携帯にしか向いていなかったことが分かる。

いつも猫みたいに警戒心が強い君が、そこまで夢中になるものがある。


"…大切な仲間です"


君がそう言った時、確かに壁を感じた。
正しく言えば、壁を作られた。

その瞬間、抑えられなくなった。
その仲間という人に、以前話していた大切な人達に、君を取られたくなかった。

これ以上何もしなかったら、君とオレはますます離れてしまう気がした。
手が届かない所に、見えない所に、行ってしまいそうで。

だから抱きしめた。
でも、それは間違いだった。


"やめろ、レン"


おちびちゃんの言葉で、我に返った。
強引に離されてイラついたが、オレは彼女を見て、とんでもないことをしでかしたのだと気付いた。

『ごめん、レディ……！』

『っ……』

いつも何かしら言葉を発する彼女が、何も言わず、何度も首を横に振った。

前髪から覗く彼女の表情は、『恐怖』。
手が震えて、目が僅かに潤んでいた。


――何てことをしたんだ、オレは。


欲に負けて、誰かも分からない相手に嫉妬して。

彼女を怖がらせた。

今までの女の子は、抱きしめると照れるかテンパるか喜んでくれるか、そのどれかだった。

だから、分からなかった。
少しでも意識して欲しくて。
ただ、それだけだった。


「ごめん……、本当に、ごめん……！！」


壁にもたれかかって、ここにはいない相手に謝る。

オレらしくない？

そんなこと分かっている。
キャラ崩壊とか、そんなのどうだっていい。


「くっそ……！！！」


怒りに任せて壁を殴る。
殴った手が痛い。

「痛い…か」

痛いさ。
手も、心も。

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