【うたプリ】高嶺の花(？)の少女は色々難ありのようで Part3

102.『I'll make tomorrow with you』 トキヤside ページ14

現在20時45分。
私は、明日のHAYATOとしてのテレビ収録の内容を確認している。


「トキヤァァァァ！！」


「！うるさいです！！」

部屋の扉が勢いよく開いた瞬間、私は手に持っていた台本を、0.1秒で机の引き出しに入れた。

「貴方にしては随分遅いですね」

「色々あったんだよー！
ねー、トキヤ」

「…何ですか」

荷物を無動作に床に置くと、音也は椅子に座り、椅子ごと私の方を向いた。


「トキヤは、卒業オーディションのペア決めた？」


「…は？」

突然何を言い出すんだ、この男は。
今は6月上旬。
一学期終了までに卒業オーディションのペアの希望を出さなければならないが、流石にまだ早いだろう。

「何故そんなことを、私に聞くのですか」

「んー、別に翔でもよかったんだけど」

「なら翔に聞けばいいでしょう」

「単純に、トキヤがペアを決めたか聞きたかった！」

……なんて単純な答え。
流石音也、と言ったところでしょうか。

「…まだ決めていませんよ」

「そうなの？」

「そうですよ。
そういう音也、貴方はどうなんですか」

「俺はね、一応決めた！」

……何ででしょうか。
今、凄く嫌な予感がしている。

「私も知っている人ですか」

「うん」

私の知っている人。
心当たりなんて、1人しかいない。




「月夜がいいんだ、俺」



「………」

やはりそうか、と思った。
最近、音也が彼女にやけに関わっていることは知っていた。
テストのこともあったので、関わるのは当たり前といえば当たり前なんでしょうが。

「俺、月夜の曲が歌いたい。
色々教えて貰った時思ったんだ。
教えてもらうだけじゃなくて、月夜の作った歌を歌ってみたいって」

「…っ……」

予想はついていた。
なのに、何故こんなに心は動揺しているのか。


『私は、貴方の本当の歌が聴きたいのに』


ふと彼女の言葉が蘇る。
私があの時歌えたのは、彼女のお陰だった。
真っ直ぐで揺るぎのない、あの瞳と言葉。

「だから俺、頑張るよ。
月夜とペアを組めるように、月夜に相応しい男になる為に！」

「…そうですか」

音也は、私が何年かけても出来なかったことを、易々とやってのける。
それが才能だと、分かってた。

だから腹ただしい。

この男には、負けたくない。


「私だって、貴方には負ける気はありませんから」


音也には、負けない。


彼女を、渡したくない。


音也だけでなく、翔やレンにも。



私を、選んで欲しい…。






"I'll make tomorrow with you"

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