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この大物の歌い手の中に私が紛れ込んでいて、批判がないか怖かった。でもコメントを見るとそんなことは無かった。
『こむぎちゃんだ！』『珍しい！』『こんにちは〜』『どんなメンツ？w』
早いコメントの中からどうにか見たものを見る限り、私のリスナーだけでなく、他のリスナーの皆にも受け入れられていた。ひとまず安堵する。
｢今日はこの珍しいメンバーでお送りしますよ〜｣
Eveさんの眠たげな声に、リスナーはさらにコメントを早めた。
｢このメンバーで配信する経緯？うーん、そうだね、96ちゃんが手当たり次第に誘った結果、来たメンバーがこれだった……かな｣
Souさんはコメントを拾い、それに適切に返答する。実際はシェアハウスで暇だった4人が集ったのだが、そもそもシェアハウスをしていること自体を公表していないため、そんなことも言えない。
｢こむぎちゃんって、Eve君とSouちゃんとは初の絡みだよね？｣
｢あっ、うん、はじめましてだよ｣
そうか、ネット上ではこれが初めてだ。事実とは違っても、初対面を振る舞うべきなんだ。
｢あ、はじめまして〜Souですよ｣
｢そ、Souさん、はじめまして〜｣
｢僕はEveですよ〜｣
｢Eveさんもはじめまして〜｣
意図せずに言葉が間延びしてしまう。小さい頃から緊張すると出る、私の悪い癖だ。コメントでは『ゆるすぎるw』『こむぎちゃんがいつにも増してゆるい』『いぶそうがゆるいからこむぎちゃんもつられてる』などと指摘された。悪く捉えられていないように見えるから、これはこれでありなのかもしれないが。
その後も何度かコメントを拾い、その度に誰かが適当に返事をしていった。途中で一度お絵描きのゲームを挟み、それからまたコメント返信に戻った。
｢このメンツでコラボして欲しい、だって｣
Eveさんは、お茶爆のコメントを拾って読む。
｢コラボか、いいかもね。曲は何にしよう｣
｢正直僕は歌詞の中に｢そう｣が入っていたらなんでもいいよ｣
｢コラボだから概要欄をSouちゃんが書けるとは限らないけどね。なんにせよ、検討してみます」
Eveさんはそう言って括る。コラボは確かにしてみたいかもしれない。でもそれを言葉にする前に話題は変わってしまった。
そういう場面が何度かののち、時間もそこそこに私たちは配信を終える。
｢お疲れ様でした。またね｣
｢またね〜｣
｢ばいばーい！｣
｢お、おつかれさまでした！｣
勇気をだして元気に挨拶をしてみた。コメントは相変わらず早かった。
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作者名：たなか | 作成日時：2022年11月29日 2時
