71 渚side ページ31
誰も、何も言えなかった。
シンと静まり返ったグラウンドで、カルマ君の声だけがよく響く。
「…へー。
本トに速いし、本トに効くんだ、
細かく切って貼っつけてみたんだけど」
その言葉を聞いて、あのスライムを握り潰したような音は殺せんせーの触手を溶かした音だったのかと、頭の隅で思った。
けどさぁ先生、とカルマ君は続ける。
「こんな単純な『手』に引っかかるとか…。
しかもそんなとこまで飛び退くなんてビビリ過ぎじゃね？」
そう言いながらカルマ君はゆっくりと固まったままの殺せんせーに近付いていく。
殺せんせーにダメージを与えた
殺せんせーとカルマ君の距離がさっきの半分くらいになった。
破壊されていた先生の触手が再生する。
「殺せないから『殺せんせー』って聞いてたけど、」
そこで一旦言葉を切って、カルマ君が殺せんせーの目の前で歩みを止めた。
警戒を強めたのか、一歩後ろに下がった殺せんせー。
俯く先生の顔を下から覗き込みながら、彼は言った。
「あッれェ
せんせー、ひょっとしてチョロイひと？」
分かりやすい挑発。
殺せんせーの顔が瞬く間に真っ赤に変わる。
どこかから「煽りよる煽りよる」「お願いだから1回黙って」というやり取りが聞こえて、咎めている人に心の中で全力で同意した。
……なんでそんな命知らずなことばっかりするの成瀬さん。
目の前の光景に釘付けになっていると、左隣から名前を呼ばれた。茅野だ。
彼女はE組に来てからまだ日が浅い。
だから、彼がどんな人かも知らない訳で。
どんな人なのか教えて欲しいとのことだった。
「…1年2年が同じクラスだったんだけど、
2年の時、続けざまに暴力沙汰で停学食らって。
このE組にはそういう生徒も落とされるんだ」
先生を煽って満足したのか、こちらに歩いてくるカルマ君。
彼から目線を逸らさないまま、でも、と僕は言葉を続けた。
「でも…
「……？
どういうこと？」
首を傾げる茅野に、停学になる前の彼を思い出しながらその根拠を挙げる。
「凶器とか騙し討ちの『基礎』なら……、
多分、カルマ君が群を抜いてる」
2人で学校帰りに遊んだ時、カルマ君が不良に絡まれ返り討ちにしたのは、一度や二度ではない。
その時の彼の様子が、頭の中でチラついていた。
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紅奈虹夢＠虹茶(プロフ) - とっても面白いです！ (12月26日 11時) (
レス) id: 763d4d21f9 (このIDを非表示/違反報告)
甘茶(プロフ) - みの字さん» 返信が遅くなってしまい、申し訳ありません💦そう言っていただけて嬉しいです。ありがとうございます！ (2022年11月29日 14時) (レス) id: 720e88b2d3 (このIDを非表示/違反報告)
みの字(プロフ) - とても読み応えがあってすごく面白いです！！BIGLOVE... (2022年9月3日 15時) (レス) id: e0f77146da (このIDを非表示/違反報告)
リース(プロフ) - そうなんですね！楽しみに待ってます！ (2021年4月28日 19時) (レス) id: 6559b789f7 (このIDを非表示/違反報告)
甘茶(プロフ) - リースさん» そう言って頂けて嬉しいです！大変申し訳ありません、続編は修正が完了していない為パスワードを掛けさせて頂いております。修正が完了次第公開しますので、今しばらくお待ちください。 (2021年4月27日 19時) (レス) id: f9e6e07d35 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：甘茶 | 作成日時：2018年7月6日 15時
