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「ねえ、キスしてほしい」
「は、いきなりすぎませんか」
「…おねがい、まだ不安なの。安心したい」
ああ、でも、泣き腫らした顔に口付けるなんて嫌かも。やっぱりいいよ、と言おうとした途端、口を塞がれた。
私の肌に彼の髪がかかってくすぐったい。
せっかくのキスなのに、
「…なんでマスク越しなの」
「…いや、その、恥ずかしくて」
「直接唇にしてくれなきゃ嫌だ。」
じとりと彼を睨むと、困ったようにマスクを下げたその人。頬に手を添えられたので、目を瞑れば柔らかい感触。
思いのほか冷たいイソップさんの唇が、触れるだけのキスをして離れようとしたので、ぎゅっと頭を抑えるように抱きしめた。
まだ離れないで、と驚いて見開かれた彼の瞳に訴えれば、少し迷うような表情を見せたあとで私の後頭部にも手がまわった。
押さえつけられるように、蹂躙するように。普段の彼からは想像できないような甘いキスをされて、息が出来なくなる。
ぐい、と薄い胸板を押して、やめてくれと伝える。
「ぁ、ふっ……もう、」
「…Aさんが望んだのに、もうやめて欲しがるなんてワガママですね」
「……だって、思ったよりも上手だから力入らなくて、」
「…煽るようなことばかり言うのは辞めてくだい」
流石に、出来たばかりの恋人に手を出すような無粋なことはしたくないので。
とかなんとか。
食堂で目を合わせてくれなかったのも、初対面の時の社交恐怖も嘘のように私と対話してくれることが嬉しくてたまらない。
「ねえ、イソップさん」
「なんですか」
「ほんとに好き。恋人、なってくれてありが…っ」
恥ずかしいから、目を逸らしながらではあるけれど。伝えておきたくて口にした気持ちを、彼は最後まで聞いてくれなくて。
ぱし、と口をおおった掌。
「その、改まって言われると恥ずかしいので、」
「人の話を最後まで聞いてくださいって言ったのは、誰だっけ？」
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33円の民 - 文才の塊ですか？とても素敵な作品ありがとうございます。 (2021年12月20日 21時) (
レス) @page10 id: a4e0508ccb (このIDを非表示/違反報告)
匿名希望：我妻さん - やだ皆だいしゅき。作者様に感謝感激雨あられ…！ (2020年2月26日 20時) (レス) id: 590a3884b3 (このIDを非表示/違反報告)
こめこ(プロフ) - アネモネさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます…！ハマリたてのジャンルなので拙い部分も多いですが、よろしくお願い致します！ (2020年1月6日 14時) (レス) id: a5ceb500b2 (このIDを非表示/違反報告)
アネモネ(プロフ) - 星押そうとしたら既に投票済みって出てきて辛い...めちゃくちゃ尊かったです... (2020年1月6日 12時) (レス) id: f6f59e365f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こめこ | 作成日時：2020年1月5日 0時
