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彼の表情こそ伺えなかったけれど、がたっと揺れた机はその人の動揺を滲ませた。
長く感じた沈黙はきっと、実際は数秒のことだったと思う。
マスクを付け直したその人は、
「…あ、その、………すみません」
と申し訳なさそうに言った。
その一言ですべて、ダメだと悟った私は慌てて席を立った。
スープはまだ残っていたけど、これ以上ここには居られない。
「…ぁ、その！…っ、こちらこそごめんね、聞いてくれてありがとう」
なんとか泣かずに言い切って、慌ててそこから去って
自室に入ったとたん、
「ぅ…」
隣の部屋はウィラだ。聞こえてしまっては心配を掛けてしまうだろうから、声をころして泣いた。
メイクが崩れるのも気にしないで、ベッドにうつ伏せになって、満足するまで泣いてやろう。それで明日からまた、いつも通り…………彼は喋ってくれるだろうか。
話してくれなくなったらどうしよう、そんなこと。考えれば考えるほどつらくてぐずぐず鼻をすすりはじめて本当に数分後。
コンコンコンコン
と慌てたノックの音が響いた。泣いてるのがバレないように、「はい」と返したつもりだけど、少し声はくぐもっていたと思う。
「あの、…僕です」
さっき話したばかりの彼の声。なにか忘れ物でもしていたのだろうか。だとしても、今は顔を見たくなかった。
「私、なにか忘れ物してたりした？それならそこに置いておいて欲しいな、あとで取りに行くから」
カールさんの声を聞くとやっぱりつらくなった。堪えきれずに涙声のまま話してしまって、バレたかもしれない。泣いてること。
「その、……すみません、入りますね」
「え、ちょ、まってダメ今は」
私の制止も聞かずにがちゃりと音を立てたドアをみて、鍵掛け忘れてたのか なんて他人事のような感想。
「あの、さっきのことなんですけど……ぇ、泣いて…」
「あの、お願いだから今は」
顔だけは見られないように、ベッドの上でぎゅっと丸くなる。うつぶせのままなので私も彼の顔は見えないが、きっと困っているんだろう。声色でわかる。
「あの！」
彼にしては大きい声にびくりとなってしまった。
「ぅ…なに…？」
「……人の話を、最後まで聞いてください」
「それは、その、ごめん…でも、」
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33円の民 - 文才の塊ですか？とても素敵な作品ありがとうございます。 (2021年12月20日 21時) (
レス) @page10 id: a4e0508ccb (このIDを非表示/違反報告)
匿名希望：我妻さん - やだ皆だいしゅき。作者様に感謝感激雨あられ…！ (2020年2月26日 20時) (レス) id: 590a3884b3 (このIDを非表示/違反報告)
こめこ(プロフ) - アネモネさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます…！ハマリたてのジャンルなので拙い部分も多いですが、よろしくお願い致します！ (2020年1月6日 14時) (レス) id: a5ceb500b2 (このIDを非表示/違反報告)
アネモネ(プロフ) - 星押そうとしたら既に投票済みって出てきて辛い...めちゃくちゃ尊かったです... (2020年1月6日 12時) (レス) id: f6f59e365f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こめこ | 作成日時：2020年1月5日 0時
