幕間 ページ10
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ポートマフィア、本部楼閣執務室で真ん中の椅子に座り、幹部の尾崎紅葉、中原中也を隣に並ばせている男が細い指を組み天井を見上げ、
「この世界は闇と光。人間は両方持っているんだけど、あの二人だけは闇しか持っていない。そんな二人が光を持つ片割れと同一化したら何が起こるだろうか。世界に混沌が溢れる時……」
男は口をつぐんだ。
「武装探偵社はこのヨコハマの闇に何処まで耐えられるか、見物だな……」
ヨコハマはおろか、関東全体まで勢力を広げ、関東の夜に横たわる全ての闇を統べる組織、ポートマフィアの首領、太宰治はふらっと立ち上がり、芝居の様な身振りで叫んだ。
「中也、紅葉!あの二人に伝えて呉れ。『闇の一員にならないか?』と」
畏まりました。と出ていく二人に太宰は声を掛けた。
「紅葉。あの子も連れ戻してきていいよ。組織にたくさん貢献してきた紅葉さんのこと、少しぐらいなら見逃してあげてもいいよ。やんなくてもいいけど。あ! 中也はだめね。僕のこと殺しそうだから」
舌打ちしながら出ていく中也と少し上機嫌顔の紅葉を見送り、執務室のドアが閉められた時、静かな水面のような声でいった。
「我々はこの世界を愛さなければならないのだよ。この世界が一人によって乱され、この世界が一つの大きな嘘だと云うことを……」
誰に言う心算だったのか、言葉の切れ端が漂う。太宰は口をつぐみ、手を目に当てた。君に会いたいよ、織田作、と呟いた。
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珀秋そら(プロフ) - 感想正座待機でお待ちしておりますべ (2022年8月9日 18時) (レス) id: ae0531e6bf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:空白時 | 作成日時:2021年7月9日 13時