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敦と芥川はビルの中を走った。途中で何人かの構成員を突き飛ばしたが、骨折か気絶程度だろう。
唯一、人の気配の或る部屋に押し入った。だが、敦達は信じられないようなものを見た気持ちになった。
鏡花の体が下から煙のように融けてゆく。まるで、その場に鏡花が居なかったかの様に。
川端康成の異能だ、と敦は直感した。強力な場所操作の異能。改めて恐ろしい異能だと感じた。
そうなると、新たな疑問が生じる。鏡花は何処へ行ったのかと云う疑問だ。
敦の手の中で携帯が小さく震えた。電話だった。電話口からは心臓をざらざらとした物で撫でられたようなゾクゾクする、それでいて抑揚がないため気味悪い声で告げられた。
聞いてはいけない。
敦の体が深いところから訴える。
何も聴こえない。
いや、聞かない。
頭ががんがんする。
手足が痺れる。
云うことを聞かない四肢。
何か言いたくてもパクパクと動くだけの口。
だんだん白くなってくる視界。
だが、電話の声と頭は残酷な答を導き出す。
「……鏡花ちゃんはポートマフィア本部ビルにいる……」
口がその答だけを告げる。恐怖の限界点はあっさりと突破される。
敦は気を失った。
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珀秋そら(プロフ) - 感想正座待機でお待ちしておりますべ (2022年8月9日 18時) (レス) id: ae0531e6bf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:空白時 | 作成日時:2021年7月9日 13時