17 彩 ページ17
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「…けど、若武はそう簡単に操れねーぜ。
難しいコースでも絶妙に決めるし」
「だから、気分いいんだろ」
「それ、あいつには絶対言うなよ」
上杉君がボソッと呟いたから、思わず笑っちゃった。
いつも口を開くと喧嘩することが多いけど、本当は信頼し合ってるんだよね。
男の子っていいなぁ。
「アーヤも、今度試合見に来ない?
アーヤが来るって日は絶対、俺もレギュラーで出るから」
黒木君に誘われて、即答で『見たい!』って思ったけど、返事は曖昧に濁さざるを得なかった。
「う、うん…。
行けたら…」
…いいだろうけど、たぶん無理だよね。
KZの試合の日は、練習より多くの観客が当然見に来る。
いくら黒木君に誘ってもらったからって、さすがにKZファンの女子が大勢集まっている場所に行く勇気はない。
だって私、やっぱり人から注目されるのが苦手なんだもの。
黒木君も上杉君も平気だなんて、すごいなぁ。
若武に至っては、私とは真逆に注目を浴びたがるんだよね。
羨ましいわけじゃないけど、私も少しは、周囲の視線に怯えないようになりたいな…。
「おい、そろそろ時間だぞ」
上杉君が時計をかざして見せてくれた。
大変。休み時間、あと一分しかない。
「アーヤ。
今日はまだ危険だから、一緒に帰ろう。
出口で待ってるから、先に一人で帰らないで」
教室まで戻る途中にそう言われたけど、私の頭の中にはまた、不用意に注目を浴びる姿が思い浮かんでしまった。
「え、い、いいよ。
私は大丈…」
「大丈夫じゃねーから言ってんだろ」
う、上杉君まで…。
更に黒木君が、優雅な笑みを浮かべてとどめを放つ。
「逃げようとしても、無駄だよ。
俺たちからは、逃げられない」
「!」
有無を言わせない圧倒的な威圧感。
笑顔だからこそ怖い人がいることを、私は今日身をもって知ってしまった。
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ooooooooo - 感動しかないわ!!!!! (2022年2月20日 22時) (レス) @page45 id: 5ba6c307c9 (このIDを非表示/違反報告)
恋雪 - 言葉では、伝えられないくらい感動しました。軽い気持ちで、読むつもりだったんですが物凄く夢中になりました。とっても面白かったです!!! (2021年8月24日 15時) (レス) id: 77a3f18b6f (このIDを非表示/違反報告)
小雪 - やっぱり、上彩サイコー!最後めっちゃ照れました!こま☆さんのこと、いつまでも応援しています!!! (2020年9月7日 19時) (レス) id: 8d0e213ce6 (このIDを非表示/違反報告)
あおい - 本当の小説として、本になってほしい!! (2020年4月10日 21時) (レス) id: 331ddf8f4c (このIDを非表示/違反報告)
Mayu - 上彩大好き上杉君推しにはありがたいです。これからも頑張ってください応援します!! (2019年6月9日 23時) (レス) id: c3d92851e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こま | 作成日時:2016年5月10日 15時