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「今日は来てくれたんですね」


あぐらをかいて、惣菜パンを片手に。

いつものボールは持っていなくて、でも持っているかのようで。


影山くんからちょっと離れたところに座って、私もお弁当の蓋を開けた。

卵焼きと唐揚げと和え物、ご飯。

少食の私には丁度いい量。


「めっちゃ旨そうっスね」


惣菜パンを半分くらい食べた影山くんが、私の弁当を覗いていた。

キラキラと目を輝かせ、何か言いたげた顔。

彼の背中から犬の尻尾が見える。


「……食べ、る?」

「はい!」


まるでその言葉を待っていたかのようで。

卵焼きを渡すと一口で平らげた。


「これだけじゃ腹減りませんか?」

「全然。運動部でもないしさ」

「だから細いんスね」


嫌味なのか褒めてるのか分からないけど、なんか嬉しい。


「……今日はバレーやらないの?」


いつもあるはずのボールがなく、食べ終わってから何もしていない影山くん。

ボールは友達って言うみたいに、彼とボールはセットだと思ってたから、この状況に疑問が湧いた。


「せっかく先輩と居れるんで、バレーはやりません」


キッパリと言い切る彼に、矛盾した気持ちはなかった。

こんな強い意志を持てる影山くんに、私は憧れる。


「あの。連絡先、教えてくれませんか?」


遠くを眺める私に、影山くんは言った。

……連絡先?

交換しようなんて言われたことがないから、脳が追い付くまでに時間がかかった。


「あぁ、うん」


“トーク”と題されたリストには、お父さんや従兄弟の連絡先と、もういない母のもあった。

機械音痴の二人でなんとか交換を終えると、影山くんは嬉しそうに言った。


「ありがとうございます」


笑みをこぼして。

▽→←第七章 懐かしの味



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ハルジオン(プロフ) - 太宰亜里沙さん» コメントありがとうごさいます。楽しんでいただけてなによりです! (2020年7月14日 17時) (レス) id: 590d5b732c (このIDを非表示/違反報告)
太宰亜里沙(プロフ) - コメント失礼します!凄く面白くて一気読みしちゃいました!静かな夏の描写や素敵な影山をみれてとても読んでいて楽しかったです! (2020年7月14日 12時) (レス) id: 9865e50aa1 (このIDを非表示/違反報告)
ハルジオン(プロフ) - はるはるさん» コメントありがとうございます。夏の描写はかなり気を使っていたので、そのように言っていただけて光栄です! (2020年7月11日 13時) (レス) id: 590d5b732c (このIDを非表示/違反報告)
はるはる(プロフ) - 影山くんと主人公の不思議な関係、対して、鮮明な夏の描写。素敵な文章に幾度も胸をきゅっと締め付けられるようでした。最後の文章で、一気に世界が色づくような錯覚を覚え、思わず泣きたくなるような気持ちになりました…! (2020年7月11日 2時) (レス) id: 356a43a05c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ハルジオン | 作成日時:2020年6月21日 13時

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