６ 目覚めの時が迫る＊ ページ10
「……ここ…どこ……？」
不意に悪夢が途切れ、私は草原にいた。
ふと自分の格好を見れば、血まみれだったはずの制服が、しわひとつない、心地よい香りを放つ物になっていた。
胸元の赤いスカーフが、風になびく。
久しぶりに感じる外の空気に新鮮な喜びを感じながら、空を見上げた。
雲ひとつない青空、草原を走る涼しげな風。
ああ、なんて気持ちいい。
「……まさか、ここが天国？」
「成る程、そう思うかも知れぬ。
……だが、未だに貴殿は生存しておるぞ」
小さな呟きに返ってきた言葉に勢いよく振り替えれば、そこには美女がいた。
色白の肌に、澄んだ青空のような瞳。
長く伸びた白髪は、まるで絹糸のようだ。
自身と同じ真っ白な巫女装束を纏[ﾏﾄ]い、そこに静かにたたずむ彼女。
あの白猫と同じ色合いと同じ雰囲気に、心臓がドキリと跳ねた。
「いい日和じゃ。…貴殿は秋村A…か？」
「はい。あの…どこかでお会いしました…？」
「ああ、一度だけな。
しかし、貴殿が分からぬのも無理はない。
……座れよ」
彼女の言葉に戸惑っていれば、彼女と私の前に出てきたのはテーブルとチェア。
淡い水色のテーブルクロスには、ティーセットが並んでいる。
急に現れたマジックのようなそれに驚きながら、彼女と共にチェアに腰かけた。
「……単刀直入に言おうか」
カップに紅茶を注ぎながら私に話かける美女に
はい、と小さく返事をし、彼女の白くしなやかな手を見つめる。
何故だろう、とんでもなく嫌な予感がする。
跳ね続ける心臓が、バクバクと派手な音をたてる。
彼女の薄い唇が開いたその時＿＿＿＿＿＿、
「…我が、貴殿を殺してしまった」
周りの音が、消えた。
殺した？彼女が。誰を？私を。
うん、そう、私は死んだ。
誰のせいで？…あの、白猫のせいで。
じゃあ、じゃあ、彼女が、白猫。
憎しみと怒りが、溢れだした。
彼女につかみかかりたくなる衝動、衝動。
「…本当に感謝する。そして、貴殿には哀れな運命をたどらせ…申し訳ない。だから、」
蘇りそうになった悪夢は、彼女の次の一言で頭の隅に追いやられた。
「…我は、俗に神と言われる存在。
貴殿の時間を、新たなる世界に飛ばそう」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 44人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「リボーン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
千桜(*_*)(プロフ) - 続きがとても気になります！続編楽しみです！ (2013年12月17日 10時) (
レス) id: e811a56b71 (このIDを非表示/違反報告)
音葉(プロフ) - このお話、とっても大好きです！更新楽しみにしてますね！！影ながら見守っています(=ﾟωﾟ)ﾉ (2013年7月29日 12時) (レス) id: 79ec10fac5 (このIDを非表示/違反報告)
霙@kutiki(プロフ) - ギャグ小説の方からジャンプしてきました！こっちもとても面白くて、続きがとても楽しみです！！更新頑張って下さい応援しています♪p(^-^)q (2013年7月21日 16時) (レス) id: 7b0e251a07 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：夢霧 | 作成日時：2013年7月3日 17時
