９ 眠れぬ貴女に死の記憶＊ ページ15
(……今日は、眠れないかもね)
そんな事をぼんやりと考えていた視線の先で、
カーテンのわずかな隙間から漏れる月光が、アラウディのプラチナブロンドを光らせていた。
不機嫌そうに目をつむる彼は、自分の美しさなんて欠片程も理解していないに違いない。
その時、不意に聞こえてきた苦しげな呻き声。
毎夜毎夜、あたしの瞼を軽くさせるそれは、止む事を知らないらしい。
眉を潜め、視線を落とした先にあった真っ白なシーツが、さらにあたしを覚ましていく。
(………A……)
「……リーア、眠ってもいいのですよ」
シーツの裾を握りしめたあたしに掛けられた、穏やかなルーアの言葉。
「……無理。…だって」
"今夜、やっとAが知れるんだもん。"
口の中で小さく呟いた時、病室の扉が音も無く開いた。
刹那、アラウディの瞳が鋭く細められる。
「遅いよ……、何してた」
「ヌフフ……少々心の準備に仕度がかかりまして」
部屋に入って来たデイモン・スペードの愉快そうな言葉に、アラウディの機嫌がとたんに悪くなる。
それに釣られ、ルーアの機嫌まで急降下するのを肌で感じながら、デイモンの行動を目で追った。
「これが、異界から来た娘、ですか……」
品定めするような口調に、ぎりっと奥歯を噛み締める。
(……やめてよ、やめなさい)
……そんな目でAを見ないでよ。
ギリギリまでせりあがってくる本音を飲み込んだ代わりに、瞳を少しだけ鋭くした。
しかし、鋭い六つの瞳を受けながらも、彼は呻き続けるAのベッドに近づく。
真正面で止まった彼の足。
歪む唇。激しくなる呻き声。
高まる鼓動と胸騒ぎ。
「…では、始めましょうか……」
暗闇の中で浮かび上がった瞳の中のスペードに、小さく息を呑んだ。
＊ ＊ ＊ ＊
『お母さん！今日週番だから起こしてって言ったじゃん!!』
『あら、私、お兄ちゃんに頼んだのよ？』
『起こしてあげて!!私もう行く!!』
『おはよう、A。髪ボロボロ』
『しーちゃん、おはよ…。手厳しい』
『ユキちゃん、部活行こうよー』
『…あたし、数学の補習プリントが…』
流れ込む映像と声は、ありふれた日常。
家族と友人と学校。
だが、やがて映像はぶれていく。
赤い信号機。
近づくトラック。
白猫の碧眼。
黒いタイヤに、押し潰されて＿＿＿＿!!
「あっ…あぁあぁいやぁぁぁっ!!!」
映像が赤に染まった時、悲鳴が響いた。
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千桜(*_*)(プロフ) - 続きがとても気になります！続編楽しみです！ (2013年12月17日 10時) (
レス) id: e811a56b71 (このIDを非表示/違反報告)
音葉(プロフ) - このお話、とっても大好きです！更新楽しみにしてますね！！影ながら見守っています(=ﾟωﾟ)ﾉ (2013年7月29日 12時) (レス) id: 79ec10fac5 (このIDを非表示/違反報告)
霙@kutiki(プロフ) - ギャグ小説の方からジャンプしてきました！こっちもとても面白くて、続きがとても楽しみです！！更新頑張って下さい応援しています♪p(^-^)q (2013年7月21日 16時) (レス) id: 7b0e251a07 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夢霧 | 作成日時：2013年7月3日 17時
