松野家の隣人ちゃん2 (ページ10)

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『どういうこと?』

瞳を曇らせるカラ松｡

変な発言もここまで来ると困る｡
しかも何か暗そうな感じだし｡

「分からないんだ､本物の俺が」

『本物の俺…』

「色んな役を演じてきたせいで」

『お､おう』

口は笑いながらも目は悲しそう｡
えぇ…どうしよう私慰めるの苦手｡

でも何とか励ましてあげなきゃ｡

『どれが素の自分か分かんないの?』

「たまにな､そう思うんだ」

『そっか』

ぱっ､とカラ松の手を放す｡

ぷしっ､と少し残ったオランジーナの
蓋を開けて残りをくくっと飲み干した｡
空になったペットボトルは鞄にぽい｡

場に合わないテンションの声を張り上げた｡

『そーれは困っちゃったね～』

「は､ハニー?」

『ささ､はやくお家帰ろ』

もう一度ちょっと痛いくらいに手を繋ぎ｡
ぐいぐい松野家まで引っ張って行く｡
その間彼が何を言っても聞こえないフリ｡

ドアの手前でぴたっと止まり
カラ松の方にくるりと振り返る｡

「ハニー､急にどうしたんだ」

『カラ松』

「ん?」

驚きを隠せない顔で私を見詰める彼｡

そんな彼の頬を両手を伸ばして包む｡
くっ…男の癖に綺麗な肌しおって……｡
いやいや､今は真面目にしよう｡

『ねぇ』

カラ松の目を見て､出来るだけ小さな声で｡

『きす､しようよ』

「えぇっ！？」

『んー』

戸惑う彼なんて気にせず唇を寄せる｡
目を綴じると口に熱い吐息が触れた｡

『…』

うっすら目を開けると顔を真っ赤に染めた
涙目になってあわあわしてるカラ松がいて｡

これだ｡

『はいこれーーッ！！！』

べちいぃぃいんっ！！！

今ある力を振り絞って彼の頬を叩いた｡
我ながら最高の馬鹿力だと思う｡

いやもう本当ごめん怒るなら後にしてね｡

『多分､カラ松の素の顔これだよ』

「え…?えぇ……?」

『これこれ､これ覚えとこうね』

「は､はにぃ?あの…あつぅいキッスは…」

『無いけど』

「えぇ…」

私の手の痕がしっかり付いちゃった頬を
両手で押さえるカラ松の頭をぽんぽんして
隣の自宅に帰ろうと彼の横を抜ける｡

つもりだった｡

『いっ！ちょっ､抜ける腕が！！！』

すれ違いさまに手首を掴まれた｡
腕をふりほどいてカラ松を睨むと
大きな手で口を塞がれた｡

『あの､急にどうし』

「しようと言ったのはハニーじゃないか」

にやり､彼の口角があがり
私の口を塞いだ手の上から口付ける｡

ちゅっ､とやらしい音が耳に響いた｡

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