松野家の隣人ちゃん2 (ページ9)

今日:22 hit、昨日:20 hit、合計:261,488 hit

55. ページ9

*

「ハニー」

『なにー』

きゅっと手を繋いで歩く帰り道｡

カラ松は手が温かくて気持ちいい｡
手汗は別として｡気にしないのそこは｡

「コロッケでも買っていこうか」

『ん､いんじゃない?喜ぶよみんな』

「そうだな」

商店街に入ってすぐのお惣菜屋さん｡
メンチカツや揚げ物のいい匂いする｡

「あら､Aちゃん」

『わー！お久し振りです』

「これ持ってきなさい」

兄弟思いのカラ松兄さんがコロッケを
買ってる間に､お隣の和菓子屋さんが
出来立てのお団子を包んで私にくれた｡

みたらし団子やんんん…おいしそう｡

『いいんですか！？』

と言いつつ放す気はもうない｡

「いいのよ～､6つ子ちゃんと仲良くね」

『わーい！ありがとうございます！』

11本入ってるってことは松野さん家と
私の家で一緒に食べてってことなのかな｡
でも今うちの親家にいないんだよね…｡

「ハニー」

『ん?』

「大丈夫か?行くぞ」

『うん』

私の異変か何かに気付いたのか
カラ松は心配そうに私の顔を見て
ひとまわり大きい手で私の手を握った｡

そのまま引っ張られるようにして
無言のまま､しばらくふたりで歩く｡

『……からまつ､』

ふと､自然と零れた声｡

何を言おうかなんて考えてなかった｡
そういう所がよくないんだよ私は｡

ただ､この沈黙が辛くて｡苦手で｡

「何だい?ハニー」

ほらほらほらぁ！大事な話か?的な顔で
カラ松は私の顔を見詰めてる｡どうしよ｡

『あの…きょう､よかった…とっても』

褒めるだけなのになに照れてんの私｡

「ほんとか?」

『うん､本番楽しみにしてるね』

「あぁ！ありがとう」

『んわっ！』

ふにゃんと女の子みたいに柔く笑って
カラ松は私の頭をくしゃくしゃ撫でた｡

そんな崩れた私の頭見て笑ったでしょいま｡

『演技してるカラ松､かっこいいよ』

「……そうか?」

『え､うん』

人通りの少ない道､沈みそうな夕日が
彼を照らして頬や髪を紅く染める｡

いつも温かいカラ松の瞳が急に冷たくなった｡

これも演技なのかな｡それとも怒ってる?
いやでも怒られるようなことしてないよね?
お団子全部食べるなんて言ってないよ私｡

『か､カラ松…?あの』

「分からないんだ」

『えっ』

「演じすぎたんだ､俺を」

『っか､カラ松…』

どうしよう意味が全然分かんない｡
理解不能｡翻訳求む｡どうしようこれ｡

．