松野家の隣人ちゃん2 (ページ15)

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「これ､君だよね」

『え…ちょっ､ちょっと待って』

確かに画面に映ってるのは私だ｡
まぁよくないけど､それはいいとして

映ってる私の顔がこれ以上ないほど
ひどい顔なのはどういうことなのだろうか｡

なんなの私嫌われてたりするの…?
それとも喧嘩売ってる?買わないけど｡

『え……なんでこれ…』

「松野トド松って知ってる?」

『よしトドちゃん覚えてろよ』

「幼馴染み見たいって言ったらこれが…」

『今すぐ消してください！お願いします！』

彼の手を両手で握って頼み込むと
どーしようかなあ､とにやにや笑う｡
アッこのひとドSだ｡サディストだ｡

『それ持っててもいいことないですよ』

「ううん､君の弱味」

『私の弱味なんて握ってもいいことなんて…』

「あぁ何か奢るよ､なに飲みたい?」

『オランジーナください！！！』

「はいはい」

立ち上がったあつしさんは自販機に
野口さんをさしこんでオランジーナと
苦そうなコーヒーを持って戻ってきた｡

オランジーナを受けとる｡ひんやり｡

『わわ､いいんですか戴いちゃって…』

「そんな顔されたら駄目なんて言えないよ」

『ほんとお恥ずかしいです』

「遠慮せずにどうぞ」

缶コーヒーのプルタブを起こし口に含む彼｡

スパダリってこういうことなのかな…
なんて思いながらオレンジを飲み込む｡

『写真､消してくださいね』

「ん～…どうしようかな」

『もっとかわいいの送ります』

「これも十分魅力的だよ……ふふ」

『笑うのやめてください』

あつしくんのスマホに映ってるそれは
私の残念な寝顔(よだれ)なんだけど
寝顔まで気遣えるほど女の子じゃない｡

「トド松くんから聞いてたけど本当面白いね」

『そんなつもりないんですけどね』

苦笑いでそう言った瞬間に鞄のなかの
私のスマホが小さく音を立て震えた｡
チョロちゃんからの呼び出しだ｡

どこにいるの､と絵文字もない一言を
白い質素なふきだしが囲んでいる｡

『あ……もう私そろそろ…』

「そうか､残念だな」

『すみません､これご馳走さまでした』

「あぁちょっと待って」

『え』

制服の胸ポケットから出されたメモ帳に
高そうなボールペンでさらさら走り書き｡
しゅっしゅっと慣れた手付きの音がする｡

「いらなかったら捨てて」

『え?』

「連絡くれたらうれしいな」

破り渡された白い小さなメモには
筆記体で彼の連絡先が書かれたいた｡

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