悪役の善人 其ノ壱【※裏切り】

皐月が嫌う所以 ページ25

〜皐月side〜



ーー俺はいつも考えるんだ。

どうすれば、あの人に恩を返せるのか、とーー



…“嫌い”。

黒城美幸に対する感情を表す言葉はそれに尽きる。

「……………。」

なぁ如月。感情を表に出しやすい俺に比べて凄く静かだよな。

…でもな、隠しきれてねぇんだ、その殺気。

今も、アイツについて考えてんだろ？


…黒城美幸。

アイツだけは絶対に許さない。

アイツは俺達の大切な存在を汚した。

許せる訳がない。

勝手に勘違いして一々べったりくっついてきた時は殺意が沸いた。

そのうえ如月にまで色目を使った。

会った時、別に俺はお前が可愛くて顔を背けてた訳じゃない。

ただひたすらに耐えていたんだ。

…怒りの感情を表に出すのを。

第一、お前を可愛いと思う事はおそらく一生の内、一度もないだろう。

Aに感情の制御の仕方を教わっていなければ、間違いなく俺が掛けた第一声は罵声だった。

Aの表向きの顔が変わったのも、Aが嫌われるようになったのも、全ての元凶はアイツだ。

俺が短絡的な性格である自覚はある。

昔の俺は、腹が立てば手が出るし、嫌な事があれば反抗する、そんな奴だった。

そんな、世間で生きていきにくいであろう俺という存在を公正してくれたAには、礼を言っても言い足りない。

それ故に、Aを馬鹿にし、嫌われる存在にした黒城は許さないし許せない。

だから俺は、黒城美幸を嫌うんだ。

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