悪役の善人 其ノ壱【※裏切り】

沼の鬼 ページ38

〜Aside〜

「……！」

鬼が移動を止めた……

竈門さんが突き止めましたか…！

私と和己さんが追いつくと、竈門さんが沼のようなものから女性を引っ張り上げたところだった。

女性を引っ張り上げた後、沼から腕を負傷した鬼が現れる。

「攫った女の人達はどこにいる！

それから二つ聞く…」

竈門さんの言葉に答える事なく、鬼は耳障りな音を立てながら歯ぎしりする。

「和己さん、この人を抱えて傍に立っていてください。

俺の間合いの内側なら守れるので」

そう言って竈門さんは、和己さんに助けた女性を引き渡す。

「……沼か………」

おそらく、地面や壁なら多分どこからでも出てこられる。

何もない空中からでも出てくる可能性……は低いが、警戒しておいて損は無いだろう。

ですがこの鬼…潜っている間も気配を消せないようですね。

竈門さんは目を瞑り、匂いで鬼の居場所を探る。

…あれは水の呼吸の……っと！

「炭治郎！相手の数は一体じゃないわ！

多分だけど分裂してる！」

沼から三体の鬼が竈門さんを狙う。

それと同時に私の背後からもう一体が襲い掛かってきた。

『水の呼吸 捌ノ型 滝壺』

『白の呼吸 肆ノ型 白夜』

鬼はとっさに沼に潜って逃げた。

切れた腕が沼に沈んでいく。

沼に潜る速度が速い…首を狙ったのに切れたのは腕……

竈門さんの方も途中で型を変えたからか、首は切れず、傷も浅かったようだ。

「…………この血鬼術…意外と厄介ね……」

私と竈門さんは、和己さんを守るように立つ。

「あっ！」

地面から鬼が現れ、和己さんの抱える女性を狙う。

竈門さんの方に一体と私の方に一体。

すぐに応戦するも、あまり深追いできないせいでまた逃げられる。

駄目ですね…人を守りながらでは思いきり刀を振ることはできません。

かと言って防衛を竈門さんに全て任せ、私が鬼の首を斬りに行くわけにもいかないですし……

竈門さんを弱いなどと言うわけではないが、流石に初任務の隊士に四対一という状況にはできない。

…どうしたものか……


「貴様ァアアア！！」

突然、鬼が声をあげた。

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