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「いつも考えなしに突っ込んで、怪我して帰ってきて、その度に私達がどれだけ心配してたと思ってるんだ。」
三郎の手が私の肩を掴む。世間一般よりも肉付きの薄い私の体にはあまりに強くてぎり、と骨肉が軋む音が聴こえてくる。
「"あの時"もそうだった。お前は委員長と一緒に忍務へ行ってから、いつまで経っても帰ってこなくて、帰ってきたときにはあんなにボロボロになって!次に見たのは死装束を着て、死に化粧をしたお前だったんだぞ!?」
「三郎っ、痛い……!」
強く握られていてすごく痛いのに、目の前の彼の方がずっと痛そうな表情を浮かべている。
「勘右衛門と兵助は抜け殻みたいになって、八左ヱ門は毎日のように自分を傷つけて、雷蔵はお前のことを思い出す度に泣いていた。
そんなアイツらを見ていくほど、私が折れたらいけないって、私がお前の代わりにならなきゃって、だから頑張ったんだ。
暗くなるアイツらに必死に声をかけて、
もう修復できないだろうに仲を取り持って、
何度もあの日のやり直しを願って、
.
私だって……
涙をぼたぼたと零す彼の背中にそっと腕を回した。
「なぁお千代、俺、頑張ったんだ。」
「さぶろ、」
「だから頼む…
俺のこと、いっぱい褒めて……」
くしゃりと柔らかい三郎の髪が肩にかかる。
その髪に触れると、びくりと震えた後に背中に腕が回され、強く抱き締められる。
「頑張ったね、三郎。すごいねえ。」
ぽんぽんと優しく頭を撫でる。
普段大人びている三郎が今は小さな子どもみたいに見えて、放っておけない。
「お千代、本当にお千代がいる。」
「うん。此処にいるよ。」
「すまない。お前の願いを叶えられなくて本当にすまなかった。」
「謝らないで三郎?
自分が撒いた種は自分で育てて花咲かせないと。」
だからね、三郎
.
「また私と友達になって?」
○° ○° ○°
一夜明けて、何気ない日常がまた始まる。
玄関までのいつも通り道のりを、兵助と歩く。勘ちゃんと
「千代峯、今日数学小テストあるよ」
「勿論知ってる!苦手なとこだから復習もしてきて__」
「お千代、」
登校していると声をかけられた。私のことを『お千代』って呼ぶのは一人しかいない。
「おはよ、三郎!」
「……ん、はよ」
三郎はそのまま先を進む。
それを見送った後、兵助の方を見ると、何故か兵助の方が嬉しそうな顔をしていた。
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来夢(プロフ) - とても素敵な作品ですね!更新待ってましたぁぁぁあ!!!これからも頑張って下さい( ̄^ ̄)ゞ応援してます! (2020年10月20日 23時) (レス) id: cfa50364df (このIDを非表示/違反報告)
おもち(プロフ) - とても素敵な作品をつくってくださりありがとうございます!いつも続きを楽しみにしてます!これからも無理せず頑張ってください! (2020年3月19日 10時) (レス) id: 6604df6f14 (このIDを非表示/違反報告)
来夢 - 私この作品がとても好きです!いつも新しいお話が出るのを楽しみでワクワクしています!これからも応援してます! (2020年2月29日 22時) (レス) id: 0c53dd61ea (このIDを非表示/違反報告)
アクヤ(プロフ) - 続編だ〜!!めっちゃうれしいです!これからも頑張ってください!応援してます!! (2019年12月21日 14時) (レス) id: 64d635022a (このIDを非表示/違反報告)
るーじゃすどれいんw(プロフ) - 続編ありがとうございます!これからも更新頑張ってください!この作品が大好きです。応援してます! (2019年12月20日 22時) (レス) id: 6c9d28df35 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:無音 | 作成日時:2019年12月20日 21時