○° ページ21
「もっかい言ってみろよ八左ヱ門!なぁ!」
「ッ、痛ってぇなぁ!!」
教室で勘右衛門と八左ヱ門が取っ組み合っている光景が目に入る。
「やめろお前達!」
「……後輩たちが見てる」
小平太と長次が取り押さえて、二人に距離が出来る。それでも彼らは組で対立するかのようにお互いを攻撃し合う。
「勘右衛門!お前は千代峯のこと何にも考えてない!そんなことしても千代峯は喜ばない!絶対に!」
「うるさい!お前が、お前がもっと早くうぐちゃんを迎えに来てたらこんなことにはならなかっただろ!」
「おい、勘右衛門……!」
「勘右衛門、そんな言い方はないんじゃないの!?
ハチは僕らの分も必死になってお千代ちゃんを探してくれたんだよ!?」
諌めようとする兵助とは対照的に売り言葉に買い言葉と言ったように雷蔵が激情する。周りの人間のことはお構いなしに行われる口論は下級生たちを怯えさせるには十分すぎるものだった。
「皆。少しの間長屋に行っておいで。怖い思いさせて、ごめんね。」
「は、はい…!」
僕の言葉を聞いた下級生たちが次々といなくなる。
此処にいるのは五年生と、六年ろ組とは組だけ。
「ハチだって、お千代ちゃんを助けようとしたんだ。お千代ちゃんの幼馴染だったハチが一番辛いはずなのに、それなのに君達は…!」
「雷蔵、そんなに熱くなるな。お前達も。落ち着け。」
ずっと見ていた三郎が雷蔵を止める。熱くなることはなく、恐ろしいほどに冷静さを保っていた。
「勘右衛門、お前の言い分は分からんでもない。だから……」
「三郎さ、」
勘右衛門が絞るように声を出す。
「うぐちゃんのこと、好きだったでしょ」
「は……っ、」
「いっつも意地悪してたくせにうぐちゃんに嫌いって言われると落ち込んで、雷蔵に怒られて謝りに行ってたよね。まぁ当のうぐちゃんは気づいてなかったけど。」
一瞬動揺した三郎を見逃すまいと言うように勘右衛門は言葉を並べていく。
「ねぇ三郎。お前が、うぐちゃんのこと忘れろって言うの?」
そう言って三郎に詰め寄る勘右衛門の目に光はなくて、三郎は堂々としてはいるものの勘右衛門に対して一瞬だけ迷いの表情を浮かべていた。
「俺、は……」
「喧しい。何の騒ぎだ。」
「仙蔵!」
教室にやってきた仙蔵は、辺りを一瞥して溜息を吐く。
.
「身内の喧嘩なら他所でやれ。
__彼女に聞こえるから、やめろ。」
強気な発言とは裏腹に、その顔はとてもやつれていた。
75人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
来夢(プロフ) - とても素敵な作品ですね!更新待ってましたぁぁぁあ!!!これからも頑張って下さい( ̄^ ̄)ゞ応援してます! (2020年10月20日 23時) (レス) id: cfa50364df (このIDを非表示/違反報告)
おもち(プロフ) - とても素敵な作品をつくってくださりありがとうございます!いつも続きを楽しみにしてます!これからも無理せず頑張ってください! (2020年3月19日 10時) (レス) id: 6604df6f14 (このIDを非表示/違反報告)
来夢 - 私この作品がとても好きです!いつも新しいお話が出るのを楽しみでワクワクしています!これからも応援してます! (2020年2月29日 22時) (レス) id: 0c53dd61ea (このIDを非表示/違反報告)
アクヤ(プロフ) - 続編だ〜!!めっちゃうれしいです!これからも頑張ってください!応援してます!! (2019年12月21日 14時) (レス) id: 64d635022a (このIDを非表示/違反報告)
るーじゃすどれいんw(プロフ) - 続編ありがとうございます!これからも更新頑張ってください!この作品が大好きです。応援してます! (2019年12月20日 22時) (レス) id: 6c9d28df35 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:無音 | 作成日時:2019年12月20日 21時