Wolf Ⅱ (ページ48)

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雷に願いをページ48

＊

「お願いっ...慎...、おねがっ...」

自然と視界が捕える真っ暗な空からは、冷たい雨が降っていた
それが顔にあたる度、涙か雨の雫か分からなくなる

雨音が私の声を消し、私の感情をより強いものにした
もう何もわからなかった

頭にこびりつく北人さんの顔、声
慎に抱き上げられ、彼が走る度体に伝わる振動が、鼓動をもっともっと不安げに揺らす...

“お願い...”“お願い...”
何度言っても慎は足を止めようとはせず、自分の足である事も許してくれなかった

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ｺﾞﾛｺﾞﾛ＿＿＿＿＿＿＿

こんなドラマチックな展開いらない

タイミング良くなり始めた雷は大きな音を立てた
そしてその大きな音が耳に届く前に、目の前がピカっと明るくなる

その瞬間、光の衝撃により北人さんの顔がダイレクトに心に刺さった。

あの表情、声、そして今までの北人さんとの思い出、北人さんへの想い

全部全部...

「いやぁっ...！！！！」

私の中で何かが走って、そのまま弾けた

『うわっ...！』

私は走りながらしっかりと私を抱える慎の肩を思いっきり押した
神経の半分ほどが走ることに集中してた慎は強い衝撃によって体のバランスを崩した

体と道のコンクリートとが擦り合わさり音を成す
地面にたたきつけられた痛みに少し体を縮めた

道路に溜まっていた雨水が余計に服に染み込んで、体を冷やしていく...
涙さえも冷えてしまいそうだった...

『A...？』

悪い視界の中、慎の顔だけがハッキリと認識することが出来る
私のせいでこうなったのにも関わらず、彼は表現を優しく保ち、
私の顔を心配そうに覗いた

「まことっ...」

『＿＿＿＿＿＿＿ん？.........っ...！』

私は重たい体を起こす
そして突然の如く、慎の胸元を引っ張った

ぐんっと慎の顔が近くなり、それと同時に私の叫びと化した声が道に響いた

「助けにいかなきゃ...！！」

『...』

「ねぇ！慎！＿＿＿＿＿＿＿お願い...北人さんをっ...」

荒ぶる言動に比例して、胸元を掴む手の力が強まる

『ねぇっ...！ねぇってば...！！！』

ほぼ胸倉を掴んだ状態で体を揺さぶり始める私に、慎は困ったように顔をゆがめた
雨粒が滴って表情の変化が分かりやすかった

「＿＿＿＿＿＿＿っ、もういいっ...！！」

でも...表情が変わっても...

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