Wolf Ⅱ (ページ49)

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慎は口を開いてくれなかった。
何かをこらえるように私の目から視線を逸らすだけ
ただそれだけ

「私が行く...。一人で行くからっ...！！」

『っ＿＿＿＿＿＿＿！』

慎の胸倉を勢いよく突き放す

私は水分を吸って重たくなった衣類を纏う体を持ち上げると、
冷えて上手く動かない足を1歩ずつ前に出した

寒さなのか...
それとも恐怖なのか...
私にはわからない
でも足は震えていた

慎にいきなり連れ出されたから当たり前に靴なんて履いてない
雨水で温度が下がったコンクリートが針みたいに痛かった

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

とその時...

「っ...」

背後から暖かい温もりが私を包み込んだ
強く強く抱きすくめられる

『行くなっ...』

慎だった

「でもっ...！！」

『＿＿＿＿＿＿＿俺が行くから！』

「えっ...」

私の小さな驚きの声は雨音によって消された

『俺が...行くから...』

2度目に呟いた慎の声はそれよりも小さかった

「だったら...私もっ...！！」

『だめ...』

「＿＿＿＿＿＿＿なんでっ...！？」

私は首の前で交差させられている慎の腕を解くと、そのまま体を反転させた
背中から離れた体温

私は言葉と共に慎の肩をつかんだ

でも慎はそんな私に鋭くなった視線を向けた

『あの警告音を聞いた番人界の奴らはすぐやって来るんだ...
扱いは表社会で言う凶悪犯、指名手配犯と同じ。あわよくば裁きの前に殺されることだってある...！

Aはあの人たちの怖さを知らない！！』

「っ...」

『無知なAが入っていったところで、事が悪化して北人さんが殺されることだってある...

それでもいいの...！？』

慎の強くなった語尾に圧倒され、区別できる涙が頬に零れた

私は首を横に振る
無心に横に振った...

やっぱり私は無力なんだ...
知っていたけど、目を背け始めていたその事が心を蝕んだ

自分のやるせなさに我を失う
その場に立ちつくした

『いい...？A...。俺がここに帰ってくるまで近くで待ってて。』

慎のことは声と認識できるはいいものの、内容は右から左へと突き抜けていった

無言の私
そんな私の反応をYESと判断した慎は、私の横を一気に駆け抜けた

雨音が耳に大きく響いた

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