Wolf Ⅱ (ページ46)

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すると慎の声に気づいた北人さんは、
パソコンのキーボードに触れようとした手を一旦止めてこちらを見た

『お願い...やめてください、...北人さん』

『＿＿＿＿＿＿＿ごめんっ』

たったそれだけの会話だった...
それだけの...

その二言三言の名残が消えた瞬間、北人さんがキーボードのEnterキーを押す単音と

ﾋﾞｰﾋﾞｰ＿＿＿＿＿＿＿!!!!

それと共に流れた爆音の不気味な機械音が響き鳴った

“error”
大きく画面に映し出されたその文字
そして
“掟違反”

そうとも書いてあった...

「えっ...？」

何も理解できない...何もわからない

ただ耳には警報音が鳴るだけ...

『慎！！！！！』

そんな事の原因北人さん...
ぼーっと立ち尽くす私の後ろにいる慎に大声を放った
でもそれに負けないくらい大きい機械音

ただならぬその場の雰囲気に今にも涙が流れそうだった

「ねえっ、北人さん！？何したの...！？」

私は耐えきれず、パソコンの前に立つ北斗さんに掴みかかった
その瞬間私の目からはボロボロと止まらぬ涙が溢れる

『...』

そんな涙をこんな状況でも焦りひとつない表情で、北人さんは優しく拭った
それでも絶えず溢れる涙に、北人さんは切ない顔を見せる

『ごめん...』

そしてその言葉を呟いた...

「どういう事なんですかっ...、北人さん...」

私の言葉は勢いを失っていた

『これっ...』

「...」

不安に呑まれそうになる
そして北人さんの瞳すら不安げに揺れ始めていた

『これを持って、慎と逃げて...』

「え...」

『ここには壱馬についてのこといっぱい入ってる...。セキュリティとかも全部解いたから...』

北人さんは無理やり私の手にUSBを握らせた

『絶対に助けてね、壱馬のこと...』

「何言って...」

『持って、逃げて...』

「北人さんはっ...？」

『俺は行けない...』

「なんでっ...！？」

『＿＿＿＿＿＿＿俺は掟を破った...。俺は一緒に行けない、二人も捕まる...』

「えっ...」

掟...、掟...、掟...、

前の記憶が瞬時にフラッシュバックした

『“北人さんがやろうとしてること、番人界へのハッキングは掟に反する。
この裏社会にはね、たくさんのハッカーたちがいる。
だから番人界のコンピュータのハッキングなんてお手のもんなの。
でもそれをやられたらまずいから、掟として禁止してるんだけど...”』

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