しようか結婚 ページ48
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玄関で靴を脱いでいる時に実家から連絡が来た。
正確には父親から。
『…なんですか?』
「あぁ、近頃何もお前の話を聞かないからな。調子はどうだ」
『特に何も、真面目に仕事をして毎日充実した生活を送っていますよ』
「そうか。それは良いが、お前ももう26だろう。前田社長の息子さんを覚えてるか?お前が小さい頃によく遊んでいただろう」
この時点で、父の言いたいことはなんとなく理解できた。
『…言いたいことがあったらはっきり言ってください。回りくどいのは苦手です』
「あぁ、結婚適齢期で相手を探しているところらしい。お前はどうだと先方から話があってな。この話には母さんも同意済みだ」
『まだ私がそんな話の言いなりになる娘だと思ってますか?確かに、私26ですけれど、私の記憶に一ミリも残ってない相手と結婚してくれ。はい従いますってなりませんよ』
「…やはりお前は何もかもだめだな。姉のように優秀であればよかったものの…我も強いとは」
『お姉さんが優秀なのは、父さんの子だからと言うより、お姉さんの努力の賜物だと思います。お姉さんのお母様もさぞお優しい方だったんでしょう。それに、私の我が強いアイデンティティはむしろ母さんや父さんの血を引いてるるんじゃないでしょうか』
私がそう答えると、明らかに向こうの声の機嫌が悪くなった。
『使い勝手の悪い娘で申し訳ありませんでした。私もこれ以上迷惑をかけることはないと思うので、もう2度と連絡してこないでくださいと母さんにもお伝えください』
やっと仕事が終わってこっちは気分最高だったのに、今の一本で気分どん底。
「悪い、聞こえた」
『良いよ全然、来てたんだ気づかなかった。私親と喋る時はいつもあんな感じなの、言い方やだなぁって思ってたらごめんね』
「いや、新鮮だったくらいだな。思っても」
つくづく、私には優しいなぁって思った。
この人とだったら結婚してもいいなぁと言うより、この人と結婚したいのかもしれないといった思考の遷移に気づきそうな私がいる。
「ベランダの窓開いてたぞ、出かけるときはしっかり閉めろ」
考えたいとは言いつつ、最初から答えなんて決まってた。私もああなるのが怖くてと言うより…責任をもつということに怖気付いていただけだ。
『…陣平くん、私たち…結婚しようか』
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ユナ@前垢消えた(プロフ) - 最後の落ち方が神すぎて続きが待ち遠しい (6月6日 18時) (レス) @page44 id: 0e552ce067 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Lerian | 作成日時:2023年5月22日 21時