かっこ悪いのは ページ35
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『私が陣平くんがその爆弾解体できる時間を残して、もう一つの爆弾見つけて犯人逮捕する』
『そう、難しいことだよ。だから成功したら、私のお願い一個聞いてね。拒否権ないよ』
はっきりそう言ったあいつを、俺は信じていなかった。
このまま俺の気持ちを伝えないほうが、あいつにとっては楽なんだろうなあとか少し躊躇してしまった時間もあって残された時間は少なかった。
数多くある病院の中からたったひとつの爆弾を見つける、しかも遠隔操作されないように犯人を見つけることもしなければいけない。
どう考えても無謀なことだ。
『だから生きることを絶対に諦めないで』
電話で、顔は見えなかったが顔は浮かんだ。
「普通に躊躇なく電話切りやがったし…まぁらしいか」
どこかネジが外れた奴だった。
知れば知るほど沼にハマっていくような奴で、俺はもう長いこと骨抜きにされていた。
『陣平くん。毎日くるねぇ』
立ち上がって背伸びをしていた。その腕にはギプスがつけられてる。
「利き手、大変か?」
『大変だね、スプーンとフォークはまだ行けるけどお箸は難しい。あと字書くの難しい』
これ治ったら利き手変わってるかも〜なんて本人は至ってお気楽に話しているが、これは遠回しに俺がさせたけがだ。だって俺が電話をしてなかったら彼女は俺に囚われることもなく、怪我をすることもなかったから。
「悪い」
『え?なんで?』
「俺がケガさせたようなもんだろ、ソレ」
俺がそういうと、あからさまに彼女はムッとした顔になった。
『もしかしてだけど、私に電話したの後悔したりしてない?』
けがさせたの申し訳ないとか思ってんなら、そんなのお門違いだし、と言葉を続けた。
『陣平くんが、死んじゃって後悔するより全然マシでしょ?』
あぁ、もう本当にどこまでも人を虜にしやがる奴だと思う。
けがをさせた張本人であるのに、俺は救われたことに安堵を覚えた。
「そういや、なんかお願い聞いてとか言ってたろ。なんなんだ?」
『あ〜それねぇ。逮捕できてないからやっぱナシ』
確かに、犯人には逃げられたが双海のやったことは俺にとっては命の恩人すぎた。
「別にいいだろ、そんなん。俺は何にもないわけだし」
『え〜、でもなんかカッコ悪いから。お願いじゃなくて、質問でもいい?』
「質問?」
『うん。私も陣平くん好きだから、付き合ってくれないかな』
やっぱりかっこわりぃのは俺だ。
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ユナ@前垢消えた(プロフ) - 最後の落ち方が神すぎて続きが待ち遠しい (6月6日 18時) (レス) @page44 id: 0e552ce067 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Lerian | 作成日時:2023年5月22日 21時