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夜の森 ページ10

私の言葉に首を傾げる治。

貴「食べ終わったら云うんだよ。

本当は食べる前の挨拶もあるのだけどね」

すっかり忘れていた。

良く分からない、といった様子の治の手を取り掌を合わせる。

貴「ほら、御馳走様でした」

治「…おぃそうさぁでした……?」

不思議そうに呟く治。

貴「そうだよ、偉いな。治は良い子だ」

怖がらせない様にふわりと優しく頭を撫でる。

治「いいこ…?」

どう云う事だ、とばかりに上目遣いで此方を見やる治。

当然と云えば当然だが、治は知らない事や解らない事が多いな。

貴「あぁ、良い子だよ」

少しずつ、覚えさせれば良いか。
ーー

さて、何だかんだでもう夜だ。

私とて超人ではない、食べなければ死んでしまう。
即ち、金が無いと生きていけない。

私は夜の森で採った薬草やらを売って生活している。

昼間でも良いのだが私は夜の森の方が好きだ。

其処で問題が起きた。治を連れていくか否か、だ。

貴「完っ全に盲点だった…」

正直云って、慣れない者が夜の森に行くのは危険だ。

かと云って今の精神状態で一人にするのも危ない。

成るべく目の届く処に置いておきたいものである。

貴「…手を繋いでいれば大丈夫、か…?」

まぁ、置いて行くよりはマシだろう。

長袖の薄い羽織を纏いランタンを持つ。

懐中電灯程の明るさは要らない。

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作者名:あんこ入りのよもぎもち。 | 作成日時:2021年9月23日 11時

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