一転 ページ8
「嘘でしょ、かばん、忘れた」
私の右腕にはいつもあるはずのボロボロのカバンがなかった。
「やっちゃった、、、」
9時50分、急いでタイムカードを押して急いで店長に挨拶をして、急いで、急いで、急いで、、、そのまま
ロッカーにカバンを忘れてきたのだ、、、。
「嘘でしょ」
私は自分の馬鹿さ加減に呆れていた。馬鹿なんてもんじゃない、大馬鹿者だ。本当に最低。
駄目だ。どうしよう。本当にどうしよう。
取りに帰る?コンビニに?ストーカーは?見えないだけで外にいるのかもしれない。お母さん、お母さん、お母さんは、、、夜勤で明日の朝6時まで帰って来ない。お父さんはそもそも家にいない。
「あ、、、どうしよう、、、」
私は涙交じりの声で呟いた。
カワウソさんの部屋に行かせてもらう?そんな迷惑かけていいの?そもそもさっきの貞操観念うんぬんは、、、。
私は自分の両手を顔に当て絶望の淵にいた。
もう、駄目だ。仕方ない、カワウソさんにコンビニまで送ってもらって家まで帰ろう。
そう決意したその時
「ごめんね待たせちゃって、行こっか」
カワウソさんが車の鍵を指でチャラチャラと回しながら笑顔で階段から降りてきた
「いやどうしたどうした、なんでそんな絶望してんの?笑笑」
カワウソさんが笑いながら私の元へ近づいてきた。
「あの、カバンをコンビニに忘れちゃったみたいで。あの、だから、取りに帰ります。送ってもらってもいいですか?」
こんな馬鹿みたいなことを言うのは本当に恥ずかしかった。
そういった瞬間、カワウソさんの顔が曇った。
「いや、Aちゃんって、ホントに馬鹿なの?」
カワウソさんが眉をしかめながら低い声で言った。笑顔はもうない。
その言葉に喉が詰まってしまった。
カワウソさんの怖すぎる表情と申し訳なさで心の中が恐怖と自己嫌悪でいっぱいになった。
(そうですよね。ごめんなさいごめんなさい。本当にごめんなさい。)
心の中で土下座をした。
本当にカワウソさんの言う通りだ。私は馬鹿だ。
すると
「コンビニ行ったらまたストーカーいるかもしれないよ?もうちょっと想像力働かせたほうがいいよ」
カワウソさんが怒りが混じった重いトーンで言った。
場の空気は最悪だった。
(いや、そんなことわかってるし、、、でも取りに帰らなかったら家入れないし、、、)
心の中でカワウソさんに対して反発をしていた。私は馬鹿だがそれぐらい想像できる。
「あー、もう、俺の家泊まったら?」
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作者名:totsukada | 作成日時:2018年1月10日 23時