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参謀の役目 ページ10

…武市は私に刀を向けている。人工的な光に照らされて、それはギラリと輝いている。武市のその目からは殺意なんてものは見当たらないけれど、その刀からは殺意のような、狂気的なものを感じた。武市が何を思っているのかなんて知らないから、実はこう見えて私への殺意を燃やしている可能性もあるけれど、そんなことはどうでもいいことだ。殺意の有無がどうだろうと、やるべきことは変わらない。私の前に立ち塞がるのなら、力ずくでも退けるだけだ。私の道を塞ぐ者には、容赦出来ない。最後にまた子を見つめ、しっかりとその泣き顔に胸を痛めて。そうして背中を向けて武市を見据える。相変わらずの無表情だ。

とはいえ、こちらには得物がない。あちらには刀がある。どうやって切り抜ければいいのだろう。先程は弾丸をうまく避けられたら良かったものの、ギリギリだった。肩にはまた子の放った弾丸が掠め、今もジクシクと痛みを帯びている。そこから暖かなものが着物に滲んでいる。出血している。深傷という訳ではないから、動けないなんてことはないけれど。

…武市は私が笑みを貼り付けても動じない。自分が負けることなんて、想像もしていないみたいに。


…出来る奴だったならどうしよう。刀がない今、腕のある剣士に勝ち目はかるのだろうか。不安が胸に這い回る。それを隠すように、私は堂々とした声を意図して出した。


「…意外だよ、アンタが私を引き留めようとするなんて」

「意外?」


小さく頷いて、私は続ける。正直、今こうして刀を向けられていることに内心では驚いているのだ。


「アンタは私のことを、そこまで良く思っていないでしょ」


…言葉、行動、視線。すべてのものから私への好意的なものは見当たらなかった。敵意を向けられているようではなかったみたいだけれど、警戒心はいつだって向けられていたように思う。観察するような視線を、ソイツからは感じていた。今も同じように。すると、「そうですね」と、武市は呟く。


「貴女が紅の舞姫だろうと、今は真選組の一員。仮に仲間になっていたとして、それでも疑心はなくならなかったでしょうね」

「なら、どうして私をここに繋ぎ止めたいのかしら」

「そんなもの、決まっています」


刀を構えながらに。武市は続ける。淡々と、けれど今は、芯を持ったような声で。


「私の役目は、晋助殿の理想を叶えること。貴女がここに居ることを彼が望んでいるのなら、そのために動くことは当然でしょう」

「…成る程ね」


…また子も、武市も、晋助の望みを叶えるためだけに、戦おうとしている訳だ。

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設定タグ:銀魂 , 土方十四郎 , 真選組、攘夷   
作品ジャンル:アニメ
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ちあき(プロフ) - 感動する(TT) (2018年5月11日 19時) (レス) id: 3135ea492c (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 獅子の子さん» 返信遅れてごめんよ!!そう、なんとも複雑なトライアングルが出来上がったよ(笑)続篇も出すからそっちでもお楽しみにあれ!! (2018年5月9日 19時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 零さん» 返信遅れてごめんなさい!!土方さんがやっと夢主ちゃんに会うことが出来ました!!小競り合いをする二人を書くのが久しぶりだったので楽しかったです!!続編も出ますので、そちらでもまたよろしくして頂けたら嬉しいです!!ありがとうございます!! (2018年5月9日 19時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
獅子の子(プロフ) - んふ、元彼と今彼のご対面ですね、、、! いやはや、楽しみでしょうが無いです。 (2018年5月2日 22時) (レス) id: 8b211097c0 (このIDを非表示/違反報告)
- 土方さんキター---!!!いつもの二人が帰ってきた!!23点って確かに容赦ない(笑)でもそれでこそこの二人だ!と思いました。更新が楽しみすぎて毎日スタンバッてます!! (2018年5月1日 20時) (レス) id: a16b684fd7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/  
作成日時:2018年4月11日 18時

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