銃口 ページ7
「…なら、私はここから、先輩を逃がす訳にはいかないっス」
カチャリ、と。無機質な音を部屋に響かせて、また子は銃を握り締めては私へと銃口を向けた。小さな、一センチにも満たないような穴があり、その奥には弾丸が眠るように潜んでいる。彼女がその引き金を引いた時、弾丸は覚醒したように本来の威力を発揮する。その弾丸で、私を殺すことさえ出来るのだ。私が出口へと進めば、それは発されるのだろう。私めがけて。また子はきっと、相当な葛藤の末。覚悟を決めて、私にそれを向けているのだろう。一瞬、その手が震えているように見えたけれど、また子は手のひらを握り締めるように銃を持つ手に力を込めて、それを制した。もしかしたら目の錯覚だったかもしれない。背後からは武市の粘りつくような視線。前方からは銃口と、また子の切実すぎる視線。
…こんなにも気まずい空間が存在するのか、と。弱音を吐くように思うけれど、私はその空間を受け入れなければならないのだと思う。彼女が私を見据えているその目の色を、忘れてはいけないのだと思う。だから、銃口からも、彼女からも、目を逸らさない。
無理矢理に口角を上げて、困ったな、と言う風に、私は呟く。近所の子供の悪戯を目の当たりにしたように。
「…ねぇまた子、私は貴女と、争いたくないな」
「なら、ここに居てください。それなら戦わずに済むっス」
「残念ながら、それは無理なんだよ」
…どうしたって、無理なんだよ、と。私は呟く。だって私は、彼の声を聞いてしまったから。私の名前を叫んでいる土方さんの声を。誰よりも愛しいと思える彼の声を、聞いてしまったから。その声に耳を塞いで、諦めることなんて出来はしない。会いたい人のところに、行かなければならない。傍に居たい人のところに。帰らなければならないのだ。例え、争うことになろうとも。極力、戦うことは避けたかった。甘いことを言っているのは分かっている。けれど、さっきまで泣いていた女の子を相手に、戦うことには躊躇いがある。
…どうして、私達は敵対しなければならないのだろう。泣きたくなるくらいにどうしようもないことを、私は思う。それでも泣かないまま、笑みを浮かべる。感情をひた隠した、偽りの笑み。きっと、とても歪な笑みだった。
「どうしても、私のことを諦めてくれない?」
…答えはもう、とっくに分かっていた。それでも私は問い掛けた。
511人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちあき(プロフ) - 感動する(TT) (2018年5月11日 19時) (レス) id: 3135ea492c (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 獅子の子さん» 返信遅れてごめんよ!!そう、なんとも複雑なトライアングルが出来上がったよ(笑)続篇も出すからそっちでもお楽しみにあれ!! (2018年5月9日 19時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 零さん» 返信遅れてごめんなさい!!土方さんがやっと夢主ちゃんに会うことが出来ました!!小競り合いをする二人を書くのが久しぶりだったので楽しかったです!!続編も出ますので、そちらでもまたよろしくして頂けたら嬉しいです!!ありがとうございます!! (2018年5月9日 19時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
獅子の子(プロフ) - んふ、元彼と今彼のご対面ですね、、、! いやはや、楽しみでしょうが無いです。 (2018年5月2日 22時) (レス) id: 8b211097c0 (このIDを非表示/違反報告)
零 - 土方さんキター---!!!いつもの二人が帰ってきた!!23点って確かに容赦ない(笑)でもそれでこそこの二人だ!と思いました。更新が楽しみすぎて毎日スタンバッてます!! (2018年5月1日 20時) (レス) id: a16b684fd7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2018年4月11日 18時