【銀魂】己の行く道 交差する心【土方十四郎】

歩いてきた意味 ページ46

『お前はすべて失った訳じゃァねェはずだ』
『お前は絶対、一人になった訳ではねェはずだ』

…いつか、土方さんが私に告げた言葉。紅の舞姫と呼ばれた嘗ての自分が許せないと言った私に。嘗ての自分を呪い続けている私に、伝えてくれた言葉だ。紅の舞姫は、護りたいもののために戦場を舞った。舞いながら、赤い鮮血を躊躇いもなく浴びていった。その赤は、舞姫を汚していった。護りたいものを護るためなら、そんなことはどうだっていいことだった。けれど、どれだけ汚れても、護りたいものは救えなくて、ただたた汚れただけになってしまった。その紅い色に、意味はなくなってしまった。けれど、それだけじゃないと、彼は、土方さんは言ってくれた。紅の舞姫は、確かに汚れてしまったのかもしれない。大切なものを幾つも取り溢したのかもしれない。

…でも、一つでも、一欠片でも、護ったものはあっただろうと。そう言ってくれた。その言葉は、私を、紅の舞姫を救ってくれた。


…紅の舞姫が護った小さなそれは、決して私を一人きりにはさせない。本当に、その通りだった。私は、一人じゃなかった。紅の舞姫が護り抜いたもののおかげで、私は孤独ではない。


…紅の舞姫が繋いだ『今』が、私を一人にはさせない。


「…だから、少しくらいは、その名前を好きになれた気がする」


…一人よがりな私は、ちゃんと見つめていれば分かるものを見つめられなくて、誰かが居てくれないと、気付くことすら出来なくて。それを気付かせてくれたのは、土方さんや、紅の舞姫が繋いだ今で出会った仲間達だ。紅の舞姫と繋がってくれた旧友達だ。

…もっと違った道を歩いていたなら、紅の舞姫という存在が居なかったら、彼等には出会えなかったかもしれない。


「…だから、紅の舞姫の名前を捨てたりなんかしないよ」


…彼等に出会ったことが、アイツらに再び会えたことが、私が歩いてきた意味になったから。信じた道を歩き続けた意味になったから。


……それは、晋助も同じことだ。


「…晋助。私、晋助のことが今でも大事だよ」


…それは今も昔も変わらない。けれど。


「…けど、私には私の意思がある。私は、真選組に居たい。それに」


…それに、と。私に回された晋助の腕を見つめながら続ける。この体勢では、その上刀まで突きつけられていては、晋助の顔を見ることは出来ない。


「…晋助は、間違ってるよ」


…それだけは、はっきり言える。何処に居たいだとか、何を望むんでいるのかだとか、そんなことは関係なく。

間違ってる→←護ったもの

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す